Percona Live 2019 in Texas Austin 現地レポ(Session Day 1) – Key note

大盛況だったPercona Live Tutorial Dayに続き、Percona Live Day1に参加したセッションのレポートをお伝えします。

Percona LIVE について

ここで Percona LIVE についてご存知ない方向けにいくつか補足したいと思います。
PerconaLIVE は3日間開催され、1日目は “Tutorial Day”、2~3日目は”Session Day”という位置づけになっています。

Tutorial Day は、3時間という長丁場でその名の通り、基礎的なチュートリアルやハンズオンがメインとなります。一方、Session Dayは、50分 or 20分 のセッションで構成される、一般的な技術イベントと同じ形式です。どちらもマルチトラックで様々なジャンルのセッションが開催されるので、参加者は自分の興味合わせて自由に選択できます。PerconaLIVEでは、SessionDayがイベントの中心になります。

また、SessionDayの冒頭には “Keynote” という形でPercona社およびスポンサー各社の中からピックアップされた方々が、短時間の基調講演を行います。この時間帯は他のセッションは開かれないため、必然的に参加者全員の注目を集めます。

なお、当日のタイムテーブルは公式サイトから確認できます。

Welcome

壇上に上がったのはPercona社で Chief Experience Officer を務める Matt 氏。同氏の挨拶で熱い2日間が幕を開けました。
冒頭にイベント中の諸注意があったのですが、PerconaLIVE専用アプリまで用意されているのは驚きました。
途中、聴衆への「初めてPerconaLIVEに参加した人?」という問いかけに約 1/5 の人が手を挙げると、とても喜んでいたのが印象的です。

本格的にPercona Live がスタートするということで、まずは豪華な方々による基調講演が行われました。

目次

The State of Open Source Databases

現在のデータベースを取り巻くエコシステムや、最新のデータベース動向の統計を中心にセッションが行われました。

Peter氏が “This Year : Huge change in Open Source” と表現した通り、この1年間ではオープンソース界で多くの変化がありました。その中でも「IBMによるRedHat買収」や「一部OSSベンダによるライセンスの変更騒動」といったトピックが取り上げられました。昨今のクラウドベンダとOSSベンダの対立については、同氏も特に関心を持っているようです。ただし、「クラウドベンダは敵ではない」という立場は明確にしていました。

ちなみにPercona社で集めたアンケートでは、回答者の50%がパブリッククラウドを利用していて、その中の70%がAWSだったそうです。また、約30%がマルチクラウドを採用していて、その大半が5000人以上規模の大企業という情報もありました。

次に、MySQLは数年連続で「最も使用されているデータベース」第二位となっており、またOSSDBでは第一位となり勢いは衰えを見せていません。

一方で、2018年度最もマイグレーション先に選ばれたのはPostgreSQLであるという情報もあり、Percona社でも新しくサポート対象製品に加えられたとともに、力を入れている状況です。
Percona Monitoring Management(PMM)2.0ではPostgreSQLの監視が新たに追加されています。

また、近年Kubernatesやマイクロサービスの進化と導入が進んでおり、Percona社の計画としてコンテナベースのAutonomous Database(自律型データベース)を出すことが発表されておりました。
また、それに関連してOpenshiftベースのPXC & MongoDB Operatorについては1.0がGAしており、OpenshiftやKubernetesユーザは簡単にこれらのデータベースを動作させる事ができるようになりました。

MyRocks in the Real World

MyRocksの開発者で、日本でも有名な Facebook 松信氏による講演でした。

MyRocksとは「RocksDB」というLSM Key Value Srote をMySQL向けにアレンジしたもので、Percona Serverにはストレージエンジンとして組み込まれています(参考)。

DBの特徴としては、「Write 性能」と「ディスクスペース」が挙げられます。ベンチマーク結果なども紹介されましたが、Read性能は通常のMySQLとほぼ同等でしたが、左の2点はかなりの優位性がありました。

また、Facebook社では “UDB” と “Facebook Messaging” という2つのデータベースで MyRocks が使われているそうです。前者は「ユーザの行動を記録する、社内でも最も巨大なデータベース」で、後者は「メッセージ機能に関する情報を記録するデータベース」だそうです。
実際にMyRocksの導入前後で比較すると、ディスクI/O および CPU 負荷はそれぞれ 10% → 20% / 21% → 42% と増加したものの、ディスク使用率は 90% → 45% と半減し、かなりメリットがあったそうです。

最後に、「Future Plan」として、MySQL8.0向けのマイグレーションや、シンプルなREADのCPU効率化なども述べられました。また、より一般のMySQLユーザにも受け入れてもらえるよう、今後 Gap Lock や 外部キー など機能面も強化していく方針のようです。

MariaDB 10.4, Where We Are Now

現在のMariaDBの状況とMariaDB 10.4の新機能についてのお話でした。
10.4の新機能としては以下が紹介されていました。

  • InnoDB Instant ALTER TABLE DROP COLUMN
  • FLUSH TABLE BACKUP Locks
  • SET SQL_MODE = MSSQL
  • Galera 4

個人的に気になったのはSET SQL_MODE = MSSQLです。
従来のSQL_MODEにもMSSQLはありましたが、あくまでSQLの実行時にMSSQLに合わせた動作を行うというものであったため、「PIPES_AS_CONCAT、ANSI_QUOTES、IGNORE_SPACE、NO_KEY_OPTIONS、NO_TABLE_OPTIONS、NO_FIELD_OPTIONS 」のエイリアスでした。

さらにそれを推し進め、MSSQL特有の構文([]によるクォート)にも対応したようです。
アプリケーションからシームレスにMS SQL ServerとMariaDBを使用できる日がくるのかもしれません。

https://mariadb.com/kb/en/library/sql_modemssql/

TiDB 3.0: What’s new and what’s next

Pingcapはシアトルに本社を構えるTiDBを開発している会社です。
このセッションは、同社のCTOである Ed 氏が壇上に登り、TiDBの概要と今後についてお話してくれました。

かなり多くの情報があるので、以下箇条書きでまとめました。

  • MySQL互換ではあるが、ミドルウェアでもストレージエンジンでもない新しいデータベースとして紹介していました
  • 大きな顧客としては北京銀行、Meituan-Dianping(グルメサイト)、mobike(レンタルサイクル)が紹介されていました
    • 北京銀行はシステムのコアで使っているそうです。
    • Meituan-Dianpingでは30クラスタ200 over物理ノードが存在しているとのこと
  • SysbenchでAuroraとの比較が行われており、Point SelectではAuroraはスレッドの並列数によりTiDBの倍のスループットを出しているグラフが紹介されました。
    一方でUpdateではAuroraがある時点でスループットは頭打ちになるのに対してTiDB3.0はリニアに性能が増加するグラフが紹介されていました。
  • TPC-CでもTiDBの性能がリニアに増加する様子が紹介され、OLTP処理への強さをアピールしていました。
  • Role、Online DDL、Range/Hash Partition Explain等、現在MySQLにある機能はほぼ使用可能のようです。またFlashback dropもTiFlashというプロセスにより実現可能とのこと。
  • DBaasでの提供予定もあるそうです。
  • HTAPの実装を進めている所ということでした。

Open Source at Amazon

Keynoteの最後は、冒頭のPeter氏のセッションでも話題にあがったAWS社がセッションを担当しました。

同社では昨今オープンソースに対してかなり高いモチベーションで取り組んでいます。Hadoop や PostgreSQL など、数多くのプロジェクトにコントリビュートしており、各種OSSの団体(コミュニティ、イベント)にも積極的に参画しています。

OSSがもたらすメリットとして、以下のような “正の循環” を紹介していました。

Customer obsession -> Innovation -> Healthy communities -> Reduce maintenance overhead -> Better quality and Security

AWS社で特に注力している分野は以下の通りだそうです。セッションでは合わせてAWS内でそのカテゴリに当てはまるサービスもいくつか紹介されました。

  • Containers – AWS App Mesh = “envoy”
  • Machine Leaning – Amazon SageMaker
  • Serverless – AWS Lambda
  • Tools – Amazon Corretto

セッションを通じて、世界的にも大きな影響力を持ち続けるAWSですが、オープンソースにかける熱量や技術リソースは日に日に増している印象を受けました。

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