MySQL のテーブルデータ格納領域と言えば、datadir
パラメータに指定したディレクトリ、というのが一般的によく知られた認識だと思います。
datadir
には単一のディレクトリパスのみ指定可能です。
では、以下のような運用上や性能面の理由でデータベーススキーマごとだったりテーブルごとだったりで別ディスクにデータを分散配置したいという場合はどうすればいいでしょうか。
- 特定のテーブルに集中するディスクI/Oの負荷を分散したい
- 特定のデータベーススキーマのデータサイズが増大してきたので、現在よりも大きな容量の別ディスク側に移動させたい
- 上記のような事態を未然に予防するため、初期構築時点でディスク構成を設計しておきたい
他の RDBMS でも一般的な手法だと思いますが、あまり MySQL ではメジャーではないように思います(個人的な見解ですが…)
そこで、今回 MySQL 8.0 (8.0.21~) における設定方法を紹介したいと思います。
主な3つの方法について
異なるデータをそれぞれ別のディスクに分けて格納する方法として、リファレンスマニュアルには3つの方法が公開されています。
MySQL :: MySQL 8.0 リファレンスマニュアル :: 15.6.1.2 外部でのテーブルの作成
1. CREATE TABLE
ステートメントで DATA DIRECTORY
句を指定する
以下のコマンドで外部ディレクトリへのパスを指定してテーブルを作成します。
1 |
mysql> CREATE TABLE ... DATA DIRECTORY = '外部ディレクトリパス'; |
2. CREATE TABLE ... TABLESPACE
を使用する
1 のコマンドに TABLESPACE = innodb_file_per_table
が含まれるかたちです。
1 |
mysql> CREATE TABLE ... TABLESPACE = innodb_file_per_table DATA DIRECTORY = '外部ディレクトリパス'; |
innodb_file_per_table = ON
でない場合でも作成することができるということ以外は、1 の方法で作成した場合と機能上変わりはありません。
MySQL 8.0 においてはデフォルトで innodb_file_per_table = ON
(file-per-tableモードが有効) ですので、基本的にこのコマンドを使うことは余りないのではと考えます。
3. 外部一般テーブルスペースにテーブルを作成する
一般テーブルスペースを外部ディレクトリに作成するという方法です。
1 |
mysql> CREATE TABLESPACE テーブルスペース名 ADD DATAFILE '外部ディレクトリパス/テーブルスペース名.ibd' Engine=InnoDB; |
そのあと、作成した一般テーブルスペース内にテーブルを作成します。
1 |
mysql> CREATE TABLE ... TABLESPACE テーブルスペース名; |
一般テーブルスペースでデータ管理したことのない場合は、通常の file-per-tableモードとは領域管理の仕様や制限が異なるので、理解した上でこの方法を選択してください。
テーブルスペースの一般的な制限事項については、以下のリファレンスマニュアルページをご確認ください。
MySQL :: MySQL 8.0 リファレンスマニュアル :: 15.6.3.3 一般テーブルスペース
CREATE TABLE … DATA DIRECTORY でテーブルを作成してみる
それでは、具体的な設定であったり作成の手順を確認してみたいと思います。
前述の3つの方法のうち、今回は、最も選択されるであろう 1 の CREATE TABLE ... DATA DIRECTORY
コマンドを使った構成を試してみます。
今回使用したバージョンは MySQL 8.0.30 です。
1 2 |
# mysqld --version /usr/sbin/mysqld Ver 8.0.30 for Linux on x86_64 (MySQL Community Server - GPL) |
まず、データディレクトリ外のディレクトリを準備します。
別ディスクを用いる場合は、ファイルシステムとしてマウントして、ディレクトリ作成を済ませてください。
※Linuxでしたら LVMで構成しておくと今後柔軟に領域管理できてよいと思います。
このときのポイントとしては、対象ディレクトリに MySQL起動ユーザ(mysql)の書き込み権限を与えておく必要があります。
そして my.cnf の [mysqld]
セクションに以下のように対象ディレクトリの絶対パスを設定します。
1 |
innodb-directories='/mnt/extdisk1/mysql' |
起動時に InnoDB にディレクトリを認識させるには、datadir
, innodb_data_home_dir
, innodb_undo_directory
, innodb_directories
パラメータで指定します。
(指定されたディレクトリは、起動時にテーブルスペースファイルがスキャンされる対象となります)
今回の用途としては、データディレクトリ外のテーブルスペースファイル格納ディレクトリを指定するために innodb_directories
を設定します。
このパラメータの設定が無い場合、CREAT TABLE ... DATA DIRECTORY
や CREATE TABLESPACE ... ADD DATAFILE
を実行しようとすると以下のエラーで失敗してしまいます。
ERROR 3121 (HY000): The DATA DIRECTORY location must be in a known directory.
innodb_file_per_table
は前述の通り、デフォルトの ON のままとしておきます。
1 2 3 4 5 6 7 |
mysql> SHOW GLOBAL VARIABLES like 'innodb_file_per_table'; +-----------------------+-------+ | Variable_name | Value | +-----------------------+-------+ | innodb_file_per_table | ON | +-----------------------+-------+ 1 row in set (0.00 sec) |
db1
スキーマに属するテーブル tbl1
を作成してみます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
mysql> CREATE DATABASE db1; Query OK, 1 row affected (0.00 sec) mysql> CREATE TABLE db1.tbl1 (c1 INT PRIMARY KEY) DATA DIRECTORY = '/mnt/extdisk1/mysql'; Query OK, 0 rows affected (0.02 sec) mysql> SHOW CREATE TABLE db1.tbl1\G *************************** 1. row *************************** Table: tbl1 Create Table: CREATE TABLE `tbl1` ( `c1` int NOT NULL, PRIMARY KEY (`c1`) ) ENGINE=InnoDB DEFAULT CHARSET=utf8mb4 COLLATE=utf8mb4_0900_ai_ci DATA DIRECTORY='/mnt/extdisk1/mysql/' 1 row in set (0.00 sec) |
コマンドでの作成後に、OS 上の実際のディレクトリとファイルを確認してみます。
innodb-directories
パラメータで指定したディレクトリ内に、スキーマ名のディレクトリが作成され、その配下にテーブルスペースファイル(.ibd)が作成されました。
file-per-tableモードなので、CREATE DATABASE
を実行したときには datadir
(今回はデフォルトの/var/lib/mysql)配下にスキーマ名のディレクトリは作成されましたが、そちらにはテーブルは作成されていないことが確認できます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
# tree /mnt/extdisk1/mysql/ /mnt/extdisk1/mysql/ `-- db1 `-- tbl1.ibd 1 directory, 1 file # ls -l /var/lib/mysql/db1 total 0 |
INFORMATION_SCHEMA.FILES
からも情報を確認することができます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
mysql> SELECT TABLESPACE_NAME, FILE_NAME FROM INFORMATION_SCHEMA.FILES WHERE tablespace_name = 'db1/tbl1'; +-----------------+-------------------------------------+ | TABLESPACE_NAME | FILE_NAME | +-----------------+-------------------------------------+ | db1/tbl1 | /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd | +-----------------+-------------------------------------+ 1 row in set (0.01 sec) |
既存のテーブルスペースファイルを別ディスクのディレクトリに移動する
状況や目的によっては既存テーブルを別ディスクに移動したい場合もあるかと思います。
残念ながらオンラインで別ディレクトリにテーブル移動する(格納先を変更する)ことはできません。
以下のように ALTER TABLE ... DATA DIRECTORY
と実行しても DATA DIRECTORY
は無視されてしまうのです。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 |
mysql> ALTER TABLE ts1.t3 DATA DIRECTORY = '/mnt/extdisk1/mysql/'; Query OK, 0 rows affected, 1 warning (0.00 sec) Records: 0 Duplicates: 0 Warnings: 1 mysql> SHOW WARNINGS; +---------+------+---------------------------------+ | Level | Code | Message | +---------+------+---------------------------------+ | Warning | 1618 | <DATA DIRECTORY> option ignored | +---------+------+---------------------------------+ 1 row in set (0.00 sec) |
このことはリファレンスマニュアルにも明記されています。
MySQL :: MySQL 8.0 リファレンスマニュアル :: 13.1.9 ALTER TABLE ステートメント
すべてのテーブルオプションの詳細は、セクション13.1.20「CREATE TABLE ステートメント」 を参照してください。 ただし、テーブルオプションとして指定されている場合、ALTER TABLE は DATA DIRECTORY および INDEX DIRECTORY を無視します。
よって、以下のマニュアルにある通り、MySQL インスタンスを停止してからテーブルスペースファイルを移動させる必要があります。
MySQL :: MySQL 8.0 リファレンスマニュアル :: 15.6.3.6 サーバーがオフラインのときのテーブルスペースファイルの移動
ここに記載されている手順に沿って実施してみます。
DATA DIRECTORY
句無しの通常の CREATE TABLE
コマンドで作成されたテーブルが移動対象です。
1 2 3 4 5 6 7 8 |
mysql> SHOW CREATE TABLE db2.tbl1\G *************************** 1. row *************************** Table: tbl1 Create Table: CREATE TABLE `tbl1` ( `c1` int NOT NULL, PRIMARY KEY (`c1`) ) ENGINE=InnoDB DEFAULT CHARSET=utf8mb4 COLLATE=utf8mb4_0900_ai_ci 1 row in set (0.01 sec) |
MySQL を停止し、外部ディレクトリへスキーマ名ディレクトリごと移動します。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
# systemctl stop mysqld # ls -l /var/lib/mysql/db2 total 112 -rw-r-----. 1 mysql mysql 114688 Sep 1 13:14 tbl1.ibd # mv /var/lib/mysql/db2 /mnt/extdisk1/mysql/ # ls -l /mnt/extdisk1/mysql/db2/ total 112 -rw-r-----. 1 mysql mysql 114688 Sep 1 13:14 tbl1.ibd |
※外部ディレクトリ側にスキーマ名ディレクトリがすでに存在する場合は、任意のテーブルスペースファイルのみ(テーブル単位で)移動することでも可能です。
innodb-directories
に指定したディレクトリ以外の場所に移動させたい場合は、innodb-directories
パラメータにそのパスを追加してください。(複数のパスが指定可能)
MySQL を起動します。
1 |
# systemctl start mysqld |
無事移動が成功していることが確認できます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 |
mysql> SELECT TABLESPACE_NAME, FILE_NAME FROM INFORMATION_SCHEMA.FILES WHERE tablespace_name = 'db2/tbl1'; +------------------+----------------------------------+ | TABLESPACE_NAME | FILE_NAME | +------------------+----------------------------------+ | db2/tbl1 | /mnt/extdisk1/mysql/db2/tbl1.ibd | +------------------+----------------------------------+ 1 row in set (0.00 sec) mysql> SHOW CREATE TABLE db2.tbl1\G *************************** 1. row *************************** Table: tbl1 Create Table: CREATE TABLE `tbl1` ( `c1` int NOT NULL, PRIMARY KEY (`c1`) ) ENGINE=InnoDB DEFAULT CHARSET=utf8mb4 COLLATE=utf8mb4_0900_ai_ci 1 row in set (0.00 sec) |
SHOW CREATE TABLE
コマンドの結果は、CREATE TABLE
実行時の定義が参照されるため、移動前と変化はありません。(DATA DIRECTORY=
は付与されません)
CREATE TABLE ... DATA DIRECTORY
コマンドで作成したテーブルは格納先ディレクトリの情報が SHOW CREATE TABLE
では表示されるので、この点はご注意ください。
レプリケーション構成での注意点
基本的にはソース・レプリカでディレクトリ構成は合わせるようにすることが大事です。
例えば、ソース・レプリカともに innodb-directories
を指定してはいるものの、レプリカ側に対象ディレクトリが存在し無い(例えば作成漏れなど)、という状態で CREATE TABLE ... DATA DIRECTORY
コマンドを実行すると下記のエラーでレプリケーション停止してしまいます。
1 2 3 4 |
2022-09-01T20:11:38.900416+09:00 10 [ERROR] [MY-012592] [InnoDB] Operating system error number 13 in a file operation. 2022-09-01T20:11:38.900446+09:00 10 [ERROR] [MY-012595] [InnoDB] The error means mysqld does not have the access rights to the directory. 2022-09-01T20:11:38.906483+09:00 10 [ERROR] [MY-010584] [Repl] Slave SQL for channel '': Worker 1 failed executing transaction 'c6b6a336-29e5-11ed-ba8d-00163e10ec7b:4' at master log binlog.000002, end_log_pos 625; Error 'Got error 168 - 'Unknown (generic) error from engine' from storage engine' on query. Default database: ''. Query: 'CREATE TABLE rdb1.tbl1 (c1 INT PRIMARY KEY) DATA DIRECTORY = '/mnt/extdisk1/mysql'', Error_code: MY-001030 2022-09-01T20:11:38.906705+09:00 8 [Warning] [MY-010584] [Repl] Slave SQL for channel '': ... The slave coordinator and worker threads are stopped, possibly leaving data in inconsistent state. A restart should restore consistency automatically, although using non-transactional storage for data or info tables or DDL queries could lead to problems. In such cases you have to examine your data (see documentation for details). Error_code: MY-001756 |
この場合、改めてレプリカ側に対象ディレクトリを作成すれば、レプリケーションを再開して同期適用が成功します。
バックアップ・リストアでの注意点や確認事項
別ディスクに格納先が変更された影響で、バックアップやリストアが出来なくなる事態は避けたいところです。
コールドバックアップ時
datadir
の場合もそうですが、外部ディスクストレージを使用する都合上、コールドバックアップ時のケアが必要です。
リファレンスマニュアルから引用します。
MySQL :: MySQL 8.0 リファレンスマニュアル :: 15.6.1.2 外部でのテーブルの作成
- MySQL では、最初にテーブルスペースデータファイルが開いた状態で保持されるため、デバイスをディスマウントできませんが、サーバーがビジー状態の場合は最終的にファイルが閉じられる可能性があります。 MySQL の実行中に外部デバイスを誤ってディスマウントしたり、デバイスの切断中に MySQL を起動したりしないように注意してください。 関連付けられたデータファイルがないときにテーブルにアクセスしようとすると、重大なエラーが発生し、サーバーの再起動が必要になります。
- 必要なパスにデータファイルが見つからない場合、サーバーの再起動が失敗することがあります。 この場合、テーブルスペースデータファイルをバックアップからリストアするか、テーブルを削除して data dictionary から削除できます。
- NFS マウントされたボリュームにテーブルを配置する前に、MySQL での NFS の使用 で概説されている潜在的な問題を確認します。
- LVM スナップショット、ファイルコピーまたはその他のファイルベースのメカニズムを使用してテーブルデータファイルをバックアップする場合は、バックアップが発生する前に、必ず FLUSH TABLES … FOR EXPORT ステートメントを使用して、メモリーにバッファリングされるすべての変更が flushed からディスクになるようにします。
mysqldump, mysql shell, mydumper
CREATE TABLE ... DATA DIRECTORY
コマンドを使って新規で作ったテーブルをダンプする分には特に支障なく利用できます。
ただし、[既存のテーブルスペースファイルを別ディスクのディレクトリに移動する] のところでお伝えしたのと同様の問題は、ダンプ時にテーブル定義を SHOW CREATE TABLE
相当で取得するバックアップツールにおいて生じます。
つまり、ダンプファイルに出力された、別ディスクのディレクトリにテーブルスペースファイルを移動した既存テーブルの CREATE TABLE
には DATA DIRECTORY
句が付与されません。
そのため、ダンプファイルを単純にリストアしてしまうと、移動前の datadir
配下にテーブルが作成されてしまいます。
今回確認した限りでは、以下のバックアップツールで発生することが判明しています。
- mysqldump 8.0.30
- MySQL Shell 8.0.30 util.dumpInstance()
- mydumper 0.12.6-1
リストア前に、移動したテーブルについてはダンプファイル内の該当箇所に DATA DIRECTORY
句を追記する対応が必要となります。
リストア時にエラーにならないため、意図しない場所にテーブルスペースファイルが作成されてしまったことに気付かない可能性が高いので、ご注意ください。
Percona XtraBackup
XtraBackup はどのような挙動になるでしょうか。
結論から言うと、外部テーブルスペースにも対応しているので、バックアップ・リストア共に問題なく動作します。
XtraBackup のリリースバージョンの都合により、以下は MySQL 8.0.28 + XtraBackup 8.0.29 で確認しています。
バックアップ時
外部ディレクトリがスキャンされている様子が伺えます。
1 2 3 4 5 6 |
2022-09-01T21:05:54.789811+09:00 0 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Generating a list of tablespaces 2022-09-01T21:05:54.789896+09:00 0 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Generating a list of tablespaces 2022-09-01T21:05:54.789942+09:00 0 [Note] [MY-012204] [InnoDB] Scanning './' 2022-09-01T21:05:54.790459+09:00 0 [Note] [MY-012204] [InnoDB] Scanning '/mnt/extdisk1/mysql/' 2022-09-01T21:05:54.790582+09:00 0 [Note] [MY-012208] [InnoDB] Completed space ID check of 2 files. 2022-09-01T21:05:54.791657+09:00 0 [Warning] [MY-012091] [InnoDB] Allocated tablespace ID 3 for db1/tbl2, old maximum was 0 |
バックアップ出力先ディレクトリにテーブルスペースファイルが集約してコピーされています。
1 2 3 4 |
2022-09-01T21:05:54.914186+09:00 2 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Copying /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd to /mnt/mysql_backup/db1/tbl1.ibd 2022-09-01T21:05:54.914390+09:00 2 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Done: Copying /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd to /mnt/mysql_backup/db1/tbl1.ibd 2022-09-01T21:05:54.915871+09:00 2 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Copying ./db1/tbl2.ibd to /mnt/mysql_backup/db1/tbl2.ibd 2022-09-01T21:05:54.916063+09:00 2 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Done: Copying ./db1/tbl2.ibd to /mnt/mysql_backup/db1/tbl2.ibd |
1 2 3 4 |
# ls -l /mnt/mysql_backup/db1/ total 224 -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 1 21:05 tbl1.ibd -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 1 21:05 tbl2.ibd |
XtraBackup では外部ディレクトリに配置されたテーブルスペースをどのように判別しているのか、調べてみました。
バックアップ後、バックアップ出力ディレクトリ内に xtrabackup_tablespaces
というファイルが生成されていました。
このファイル内に、JSON形式で対象リストと思しき情報が記録されていました。
1 2 |
# cat xtrabackup_tablespaces {"version":3,"external_tablespaces":[{"file_name":"/mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd","tablespace_name":"db1/tbl1","tablespace_type":"TABLESPACE"}]} |
ソースコードを確認すると、以下リンク先の関数内で INFORMATION_SCHEMA からクエリしてリストを作成していました。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 |
mysql> SELECT T2.PATH, T2.NAME, T1.SPACE_TYPE FROM INFORMATION_SCHEMA.INNODB_TABLESPACES T1 JOIN INFORMATION_SCHEMA.INNODB_TABLESPACES_BRIEF T2 USING (SPACE) WHERE T1.SPACE_TYPE = 'Single' && T1.ROW_FORMAT != 'Undo' UNION SELECT T2.PATH, SUBSTRING_INDEX(SUBSTRING_INDEX(T2.PATH, '/', -1), '.', 1) NAME, T1.SPACE_TYPE FROM INFORMATION_SCHEMA.INNODB_TABLESPACES T1 JOIN INFORMATION_SCHEMA.INNODB_TABLESPACES_BRIEF T2 USING (SPACE) WHERE T1.SPACE_TYPE = 'General' && T1.ROW_FORMAT != 'Undo'; +----------------------------------+----------------+------------+ | PATH | NAME | SPACE_TYPE | +----------------------------------+----------------+------------+ | /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd | db1/tbl1 | Single | | ./db1/tbl2.ibd | db1/tbl2 | Single | | ./sys/sys_config.ibd | sys/sys_config | Single | +----------------------------------+----------------+------------+ 3 rows in set, 2 warnings (0.00 sec) |
リストア時
上述の対象テーブルスペースのリストファイルを元に、適切な対象ディレクトリへバックアップファイルがコピーされているのが確認できます。
1 2 3 4 5 6 7 8 |
# xtrabackup --copy-back --target-dir=/mnt/mysql_backup (...) 2022-09-01T21:14:12.431350+09:00 1 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Copying ./db1/tbl1.ibd to /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd 2022-09-01T21:14:12.432212+09:00 1 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Done: Copying ./db1/tbl1.ibd to /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd 2022-09-01T21:14:12.434297+09:00 1 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Copying ./db1/tbl2.ibd to /var/lib/mysql/db1/tbl2.ibd 2022-09-01T21:14:12.434933+09:00 1 [Note] [MY-011825] [Xtrabackup] Done: Copying ./db1/tbl2.ibd to /var/lib/mysql/db1/tbl2.ibd |
1 2 3 4 5 6 |
# ls -l /var/lib/mysql/db1/ total 112 -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 1 21:14 tbl2.ibd # ls -l /mnt/extdisk1/mysql/db1/ total 112 -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 1 21:14 tbl1.ibd |
MySQL Enterprise Backup
Enterprise Edition で利用可能な MySQL Enterprise Backup (8.0.30) でも試してみました。
こちらもバックアップ・リストアともに正常に外部ディレクトリのテーブルスペースファイルを対象として動作することが確認できます。
バックアップ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
# mysqlbackup --login-path=meb --backup-image=fullbackup.mbi --backup-dir=/opt/mysql_backup backup-to-image MySQL Enterprise Backup Ver 8.0.30-commercial for Linux on x86_64 (MySQL Enterprise - Commercial) Copyright (c) 2003, 2022, Oracle and/or its affiliates. (...) 220902 12:30:15 RDR1 INFO: Copying /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd. 220902 12:30:15 RDR1 INFO: Copying /var/lib/mysql/db1/tbl2.ibd. (...) # mysqlbackup --login-path=meb --backup-image=/opt/mysql_backup/fullbackup.mbi list-image (...) [File]: [Size: 114688]: datadir/db1/tbl1.ibd [File]: [Size: 114688]: datadir/db1/tbl2.ibd (...) |
リストア
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 |
# mysqlbackup --login-path=meb --backup-image=/opt/mysql_backup/fullbackup.mbi --backup-dir=/opt/mysql_backup/tmp --datadir=/var/lib/mysql copy-back-and-apply-log (...) 220902 12:41:55 MAIN INFO: Loading the space id 3 name '/var/lib/mysql/db1/tbl2.ibd'. (...) 220902 12:41:55 MAIN INFO: Loading the space id : 2, space name : /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd. 220902 12:41:55 PCR1 INFO: Starting to parse redo log at lsn = 19357206, whereas checkpoint_lsn = 19357244 and start_lsn = 19357184. 220902 12:41:55 PCR1 INFO: Doing recovery: scanned up to log sequence number 19429518. 220902 12:41:55 PCR1 INFO: Starting to apply a batch of log records to the database.... (...) # ls -l /mnt/extdisk1/mysql/db1/ total 112 -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 2 12:41 tbl1.ibd # ls -l /var/lib/mysql/db1/ total 112 -rw-r-----. 1 root root 114688 Sep 2 12:41 tbl2.ibd mysql> SELECT TABLESPACE_NAME, FILE_NAME FROM INFORMATION_SCHEMA.FILES WHERE tablespace_name like 'db1%'; +-----------------+----------------------------------+ | TABLESPACE_NAME | FILE_NAME | +-----------------+----------------------------------+ | db1/tbl1 | /mnt/extdisk1/mysql/db1/tbl1.ibd | | db1/tbl2 | ./db1/tbl2.ibd | +-----------------+----------------------------------+ 2 rows in set (0.00 sec) |
もしその他のバックアップツールを利用中の場合は、念の為動作確認を行っていただくことを推奨します。
まとめ
データディレクトリ外にデータベースやテーブルを配置するには、以前のバージョン(5.6 や 5.7) まではというと、シンボリックリンクを用いた方法がありました。
MySQL :: MySQL 5.7 Reference Manual :: 8.12.3 Using Symbolic Links
ただし、この方法は InnoDB のテーブルでは諸々問題が生じることからサポートされておらず、その正規の代替手段が今回紹介した方法であるという経緯があります。
現在運用中にデータ格納先に関して、記事冒頭で挙げたような問題を抱えている場合はもちろんのこと、MySQL 8.0 にアップグレードする際にも、今回のテーブル作成方法の採用を検討してみてはいかがでしょうか。