MySQLでは2025年より、従来型のリリースサイクルから、よりフィードバックを高速にしつつ安定的なユーザ運用を実現するために、Innovation Release と Long Term Support(LTS) というバージョニング体系を取り入れました。
この試みをさらに前進させる改善として、2026年から、バージョン番号とリリース体系に大きな変更が加えられました。
これまでの「8.0」「8.4」「9.7」といった連番ベースの表記から、今後はリリース時期を表す「26.7」「26.10」のようなカレンダーバージョニングへ移行します。
さらに2026年7月3日には、新しい体系で最初のInnovation Releaseとなる「MySQL 26.7」のEarly Access版が公開されました。今回は、新しいバージョン体系とリリースサイクル、MySQL 26.7 Early Accessに含まれる機能を整理します。
なお、Early Access版は評価とフィードバックを目的としたものであり、本番環境での利用を想定したものではありません。(オラクルブログ)
これまでとこれからのバージョン体系
従来のバージョン体系
MySQLは長らく、次のような連番形式でバージョンを管理してきました。
- MySQL 5.7
- MySQL 8.0
- MySQL 8.4
- MySQL 9.0~9.7
2023年以降は、リリースを大きく次の2種類に分けています。
LTS(Long-Term Support)
長期的な安定運用を重視するリリースです。原則として、新機能の追加や動作変更を抑え、セキュリティ修正や不具合修正を中心に提供します。
代表的なリリースとして、MySQL 8.4 LTSとMySQL 9.7 LTSがあります。
Innovation Release
新機能や仕様変更を継続的に取り込むリリースです。約3か月ごとに公開され、新しい機能を早期に利用したいユーザーや、定期的なアップグレードが可能な環境を対象としています。
LTSとInnovationは、正式リリースとして本番利用できる点は共通しています。単純に「LTSは正式版、Innovationはベータ版」という関係ではありません。
違いは、安定性を優先するか、新機能の提供速度を優先するかというリリース方針です。(MySQLリファレンス)
新しいカレンダーバージョニング
今後のMySQLでは、バージョン番号にリリース年と月を使用します。
形式は次のとおりです。
YY.M
YY:西暦の下2桁M:リリース月。先頭のゼロは付けない
例えば、2026年7月のリリースは「26.7」、2026年10月のリリースは「26.10」となります。
Innovation Releaseは、次のようにリリースのたびに番号が変わります。
26.7.026.10.027.1.027.4.0
一方、LTSでは最初に付与された年と月が、そのリリース系列の終了まで維持されます。
例えば、2028年4月に開始されるLTSは、次のように更新される想定です。
28.4.028.4.128.4.2...
2029年に更新された場合でも「29.x」にはならず、28.4 LTS系列として管理されます。
これにより、バージョン番号を見るだけで「いつ始まったリリース系列なのか」が分かりやすくなります。(オラクルブログ)
何がいつリリースされるのか
MySQLの通常リリースは、引き続き四半期ごとです。
まず、9.7のバージョン以降では、Early Access版が約1ヶ月前にリリースされる予定という事が今後大きな変換点になります。
通常リリースは、Oracleの四半期ごとのCritical Patch Update、いわゆるCPUのサイクルに合わせて提供されます。
ただし、CPUに合わせたリリースだからといって、内容がセキュリティ修正だけに限定されるわけではありません。
- LTS:セキュリティ修正と不具合修正
- Innovation:セキュリティ修正、不具合修正、新機能
また、四半期リリースの間に重大な脆弱性への対応が必要になった場合は、CSPU(Critical Security Patch Update)として、対象を絞ったセキュリティ更新が提供される場合があります。(オラクルブログ)
MySQL 26.7 Early Access版が公開
2026年7月3日、MySQL 26.7 Community ServerのEarly Access版が公開されました。
MySQL 26.7は、MySQL 9.7 LTSの後に提供される最初のInnovation Releaseであり、新しいカレンダーバージョニングを採用する最初のリリースでもあります。
Oracle社のブログではMySQL 26.7 Early Accessで実装された機能は以下が紹介されています。
- Undoログ管理の改善 Undoログ切り詰め処理の状態管理を見直し、障害復旧時の堅牢性を向上。
- InnoDB内部処理の改善 Redoログ、表領域、MVCC、メタデータ、リカバリ処理などの内部基盤を整理・改善。
- Change Stream Applierの追加 レプリケーションの変更適用処理を並列化し、レプリケーション遅延の改善を図る新しいApplierを導入。
- Group Replicationのデフォルト通信方式を変更 通信スタックのデフォルトを
XCOMからMYSQLへ変更。 - XCom関連設定の非推奨化
group_replication_communication_stackやgroup_replication_ip_allowlistなどが非推奨に。 - 耐量子暗号への対応 OpenSSL 3.5以降の環境で、量子コンピューターを意識した新しい鍵交換方式を利用可能に。
- アップグレードチェックの進捗表示 互換性チェックやアップグレードチェックの実行状況を確認しやすく改善。
- Thread Pool PluginをCommunity Editionへ提供 多数の同時接続を効率的に処理するThread Pool PluginがCommunity Serverでも利用可能に。
いくつかは、すでに公開されていた9.7 Early Access版に同梱された機能です 。
注目したい機能を検証してみた
特に興味深いと感じた以下の機能を検証してみました。
新しいレプリケーション適用方式(Change Stream Applier)
従来型のマルチスレッドレプリケーションに対し、今回 Change Stream Applier という新たな方式が追加されています。
レプリケーションアプライヤーの処理性能が向上しているかを確認するため、APPLIER_VERSION=1とAPPLIER_VERSION=2を比較しました。
SourceとReplicaには、Oracle Linux 9、8 OCPU、メモリー32GB、ネットワーク帯域幅8Gbpsの同一スペックの環境を使用しています。Sourceに対して、sysbenchのoltp_write_onlyを16スレッドで実行しました。
|
1 2 3 4 5 6 7 8 |
sysbench \ --tables=10 \ --table_size=100000 \ --report-interval=1 \ --time=999 \ --threads=16 \ oltp_write_only run |
ReplicaでSTOP REPLICA IO_THREADを実行し、未適用のバイナリログを一定数蓄積した後、APPLIER_VERSIONを切り替えてレプリケーションを再開しました。
|
1 2 3 4 |
STOP REPLICA; CHANGE REPLICATION SOURCE TO APPLIER_VERSION=1; START REPLICA; |
同様にAPPLIER_VERSION=2でも計測し、GTID Lagの減少量から1秒あたりの適用トランザクション数を算出しました。
開始後28秒間を比較した結果、平均処理量はAPPLIER_VERSION=1が1,004.5 transactions/秒、APPLIER_VERSION=2が1,785.2 transactions/秒となりました。今回の検証環境では、APPLIER_VERSION=2によりレプリケーションの処理量が約1.78倍向上しました。
MySQL Enterprise スレッドプール
Enterprise版からのバックポートで、ついに…という感じですね。
MySQL Enterprise スレッドプールは、大量接続処理時に接続ごとに実行されるSQLを効率的にまとめて処理する事を目的としており、クエリ速度のばらつきを抑制する事ができます。
今回は、sysbenchで多数(4096)の同時接続を発生させ、標準のスレッドモデルとスレッドプール有効化時のp95レイテンシを比較しました。
想定通り、Thread Pool ONのケースでは、p95レイテンシが低い位置で安定していることが確認できました。
サマリ
MySQLは、従来の連番ベースのバージョン体系から、リリース年と月を示すカレンダーバージョニングへ移行します。
2026年7月のInnovation Releaseは「MySQL 26.7」、2026年10月は「MySQL 26.10」となります。将来のLTSについても同じ表記が使用されますが、LTSでは開始時の年と月を、その系列のライフサイクルを通じて維持します。
MySQL 26.7 Early Accessでは、次の変更が公開されています。
- Undoログ切り詰め処理の堅牢性向上
- InnoDBのリカバリ・メタデータ基盤の改善
- 新しいChange Stream Applier
- Group Replicationのデフォルト通信スタック変更
- XCom関連設定の非推奨化
- OpenSSL 3.5を利用した耐量子暗号対応
- アップグレードチェックの進捗表示
- Thread Pool PluginのCommunity Edition提供
目立つ新機能だけでなく、InnoDBのリカバリやレプリケーション適用処理など、データベースの基盤部分にも手が入っています。
特にChange Stream ApplierとThread Pool Pluginは、レプリケーション遅延や高同時接続という現実的な課題に関係するため、Early Access版で動作を確認する対象として分かりやすい機能です。
一方で、Early Access版はあくまで評価用です。正式リリース時には仕様や提供範囲が変更される可能性があるため、本番導入を検討する際は、GA版のリリースノートと公式ドキュメントを改めて確認する必要がありますのでご注意ください。





