はじめに
2025年11月6日、東京・赤坂にて『Oracle HeatWave Meet in Tokyo』が開催されました!
本イベントは日本オラクル株式会社が主催するイベントで、テーマは「シンプルな構成でデータ資産を変える」。
MySQL HeatWave の最新の導入事例や最新情報を直接見聞きできる貴重な機会だったので、現場の雰囲気と学びをまとめます。
会場の雰囲気を先にお伝えしておくと、ANAインターコンチネンタルホテル東京の会場はほぼ満席状態。約60名が参加し、非常に活気に満ちていました。
また、ノベルティとして HeatWave のマークが入ったコースターやステッカー、モバイルスタンドが頂けました!
オープニング
オープニングセッションでは、日本オラクル株式会社 木村 央憲 氏より、これまでの MySQL とオラクル社の歩み、またオラクル社が MySQL にもたらした付加価値などについての話がありました。
その歩みの中で、MySQL HeatWave の名称が何度も変わったことがいじられており、会場からも笑いが起きていました。
ぜひ、このまま MySQL HeatWave で固定していただけるとありがたいです!
特別企画:パネルディスカッション
続いて、本イベントの見どころのひとつであるパネルディスカッション。
今回は MySQL HeatWave を実際に導入したユーザー事例として、パネリストに株式会社イープラス 尾崎 欧州 氏、ジニアス・ソノリティ株式会社 川本 昌之 氏が登壇されました。
MySQL HeatWave の採用経緯や導入してみて感じた性能面やコスト面での所感について熱く語られていました。
ちなみに、ここでも MySQL HeatWave の名前がコロコロ変わっていることをいじられており、やはり名称変更については皆さん、混乱している様子がうかがえました(笑)
※右からファシリテーター:廣瀬 一海 氏(日本オラクル株式会社)、 川本 昌之 氏(ジニアス・ソノリティ株式会社)、 尾崎 欧州 氏(株式会社イープラス)
パネルディスカッションでは、MySQL HeatWave 採用までの経緯や背景(課題、解決)、導入してみて感じたユーザー目線の意見をざっくばらんに聞くことができました。
ジニアス・ソノリティ株式会社
ジニアス・ソノリティ株式会社では、運営するゲームの進行に合わせてサーバーアクセスが発生し、すべてのアクセスログを収集・分析しており、そのログ分析に非常に時間がかかるという課題があったそうです。専用の分析ツールの導入を検討していたところで、MySQL のイベントで MySQL HeatWave を知り、導入したとのこと。
MySQL HeatWave はログ収集・分析で使用されており、良かった点として処理性能が高速化し処理時間の短縮された点を強調されていました。
特に処理が高速なので、分析クエリが間違っていてもすぐにやり直せる、突発的な分析依頼にも対応できる、これまで使用していた同じSQLで高速化を実現できるという点でメリットを感じているそうです。
株式会社イープラス
株式会社イープラスでは、チケット販売システムにおいて「チケット販売は曜日がきまっていて、特定の曜日にトラフィックが爆発的に増える。また、想定外のアーティスト(販売曜日)で大量のトラフィックが発生することがあり、トランザクションを捌けないことがある」といった課題があり、これまではリードレプリカを展開して負荷分散を図っていたとのこと。
MySQL HeatWave を導入したことにより、システム構成を小さくしてもトラフィックを捌ける性能を確保するとともに、コスト面で大きな削減が可能になったというメリットを強調されていました。
また、このセッションで印象的だったのは、トランスリティカルについて話題が上がったことです。「トランスリティカル」は「トランザクション」と「アナリティカル」を組み合わせた造語です。
廣瀬氏によると近年の生成AI普及により、AIに最新のデータを生成させるために OLTP と OLAP はより密接な関係になってきているとのことです。
これまでOLTPとOLAPはシステム要件上、システム構成を分けざるを得ず、ETLツールによるデータのコピーと変換の応酬により、中間データが発生しコストが増えるなどの課題がありました。
MySQL HeatWave なら OLTP/OLAP の両方を処理できるため、これまで発生していたETLツールによる中間データのコスト部分がなくなります。
実際に、株式会社イープラス 尾崎氏も「チケット受託販売でもプロモーションなどで購入情報を分析するニーズは発生しており、ETLによる変換処理でデータ鮮度が1日古くなるなどの課題は感じている」と仰っており、OLTP/OLAP の両方を処理するという要望で MySQL HeatWave 需要が高まりそうです!
主催者講演
主催者講演では、日本オラクル株式会社 佐藤 裕之 氏から先月10月にラスベガスで行われた Oracle AI Worldの概要の発表がありました。
発表では以下の内容に触れており、Oracleが「データ主導のAI活用」に大きく舵を切っていることが実感できる内容でした。
- OracleはAIのインフラを提供しているが、データ活用に舵を切っている。
- その中でもOCI は高速でより洗練されたクラウドインフラであり、改良を続けている。
- よりさらに高速化を実現するプロジェクト「Oracle Acceleron」と「OCI Zettascale10」を発表
- Oracle Acceleron:NWアーキテクチャを見直して、スマートNICを開発し NW レイテンシをより改善する高速Ethernetベースのネットワーク・インターコネクト
- OCI Zettascale10:OCI上に構築され、複数のデータセンターにまたがり、最大80万台のNVIDIA GPUを統合。NVIDIA の GPU をスケールさせ、クラウド最大のAIスーパーコンピューターを実現
- よりデータを活用できるようなプラットフォームを拡充していくことを目指す「マルチクラウド・ソリューション」
- Oracle AI DatabaseサービスがAWS、Azure、Googleのプラットフォームで使用可能
また、日本オラクル株式会社 梶山 隆輔 氏からは MySQL HeatWave の最新情報に関する発表です。
私個人として気になったポイントは以下の2つです。
MySQL HeatWave Migration Assistant
GUIベースの MySQL 移行支援ツールで、他クラウドからも MySQL HeatWave へ移行できるツールが近日提供される予定です。
現在、MySQL HeatWave へのマイグレーション手順を記載したドキュメントはありますが、例えば AWS RDS から MySQL HeatWave へ移行するドキュメントは 約50P となかなかのボリューム量があります。
それが、ツールでポンとできるようになるということであれば、かなり革新的なツールなりそうです…!
ちなみに、MySQL の移行対象バージョンですが、移行元バージョンは 5.6/5.7/8.0 、移行先バージョンは 8.4/9.x であるとのことです。
弊社でも以前、AWS RDS から MySQL HeatWave のライブマイグレーションのセミナーを開催させていただきましたが、このツールが提供開始になったら、すぐに検証したいと思います!
MySQL AI
こちらは、MySQL HeatWave の実装機能(生成AI、LLM, AutoML,ベクトル生成、ベクトル処理、NL2SQLなど)を提供し、オンプレミスでAI開発、運用を実現する完全オフラインで使用できるソフトウェアです。(LLMがCPU上で稼働するためGPUは不要)
こちらは既に提供が開始されており、完全オフラインなので、例えば製造業や船舶上のコンピュータなどインターネットに接続できない環境のシステムでもAIを使いたいという要望を対応できるという点がポイントですね。
また、MySQL HeatWave の機能強化の重点領域(トランザクション処理、開発生産性、データ分析、AI)の発表トピック順として、トランザクション処理が一番になったとのことです。
これは、ここ数年はデータ分析やAI機能の強化が筆頭トピックになっており、ユーザーからの「トランザクション処理まわりの機能強化はどうなっているんだ!」という批判を真摯に受け止め反映させた結果…とのことです。
たしかに、データベース機能あっての MySQL HeatWave だと思うので、トランザクション処理の機能強化も継続して行っていただきたいところです。
テクニカルセッション:ライトニングトーク#1
情報・システム研究機構 統計数理研究所 本多 啓介 氏からは「AI・LLMのモデルフリー評価指標:HeatWaveベクトルストアの活用」というテーマで、MySQL HeatWave GenAI の活用事例の発表です。
RAGに投入済みの文章群に新しい文書群を追加することで、ベクトルストア全体の位置関係(分布構造)が変化するため、その結果、RAG の回答傾向や類似検索の精度が変わることがあり、その変化を把握するという内容でした。
文書群をベクトル空間としてみなし、その変化を MySQL HeatWave Vector Store 上で SQL のみで算出しているとのことで、SQL や Python での実装例を交えた具体的な活用事例のセッションでした。
ライトニングトーク#2
株式会社スクウェア・エニックス 神津 和之 氏からは、「AWS 環境に閉じて、シンプルに始められる MySQL HeatWave on AWS」というテーマで、検証事例の紹介がありました。
今回の検証背景としては、あるシステムのAWSクラウド移設を進めていく中で、IaaS上の MySQL から Aurora への移転する際に「Aurora へクエリ最適化しきれない可能性がある」などの課題が見つかったため、MySQL HeatWave なら課題をクリアできるのではないかということで負荷試験のPoC検証を行ったとのことです。
特にデータ投入時に失敗があったらしく、以下のポイントなどが挙げられていました。
- Aurora の snapshot を parquet 形式にして、MySQL HeatWave に読み込ませる(対応しているのは MySQL HeatWave Lakehouseのみだった)
- データ移行は、MySQL Shell ではなく mysqldump で取得した Dump データを使用すると互換性がなく、データロードでエラーになる
- PrivateLink 設定時に、先にDBを作らないと PrivateLink をつくれない罠がある
負荷試験の結果については触れられていませんでしたが、MySQL HeatWave はAuroraにはない長所もあり、既存環境に組み込んで他のDBと併用する選択肢もあり!と締めくくられておりました。
MySQL HeatWave Migration Assistant ツールが提供開始されれば、より簡単に移行・検証できると思われますので、今回のような他クラウドからMySQL HeatWaveへの乗り換え検討などもより簡単になるのではと考えられます!!
MySQL HeatWave ユーザーがつながり、広がる場 ~ HeatWavejp のご紹介 ~
イベントの最後を飾るのは、弊社も運営をつとめている MySQL HeatWaveユーザコミュニティである HeatWavejp の紹介セッションで、スピーカーは我らが株式会社スマートスタイルの内藤 達也 氏です。
冒頭の自己紹介では、趣味のランニングで30キロ痩せたという掴みで会場を沸かせていました。
セッション内では、2年間のこれまでの歩みを振り返るととともに、コミュニティ活動内容を報告されていました。
HeatWavejpでは最新情報/アップグレード情報、技術検証/機能活用、関連製品/技術情報、ユーザ事例を共有することにより、MySQL HeatWave の活用をユーザーと共に進めています。
12月9日には「[年忘れ MySQL HeatWave事例祭り]」を開催しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください!
一緒にMySQL HeatWave ユーザの輪を広げていきましょう!
クロージング
日本オラクル株式会社 加納 康世 氏によるクロージングセッションです。
「MySQL, HeatWaveがもたらす未来を語ろう。」というテーマでMySQL、これまで MySQL HeatWave に追加された機能を振り返りつつ、MySQL HeatWave が OLTP/OLAP、セキュアAI/ML開発、データレイクを分析、バックエンドのサービス化の全部をまるっとシンプルに解決できるサービスであると説明し、今回のイベントテーマでもある「シンプルな構成でデータ資産を変える」を見事に回収されていました。
懇親会
イベント終了後は懇親会が行われ、多くの参加者と交流することができました。
イベント参加者の中には MySQL HeatWave を使用したことがない方という方もいらっしゃり、「このイベントでMySQL HeatWave の魅力を知ることができ大変有意義だった」と仰る方もいました。
ぜひ、他クラウドのDBサービスを利用されているユーザーさんも、今回のイベントを機に MySQL HeatWave を活用いただけると素晴らしいなと思いました!
まとめ
今回は、Oracle HeatWave Meet in Tokyo のイベント参加レポートとして全体的な振り返りをしてみました。
MySQL HeatWave の最新情報だけでなく、活用事例やパネルディスカッションでユーザーさんの生の声も聞くことができ、非常に多くの学びを得ることのできたイベントでした。
また、最新情報からは MySQL HeatWave がこれからも大きく進歩していくことは間違いないと感じることができ、次回以降もぜひ参加したいと思える内容でした。
まだまだ成長を続けるMySQL HeatWave。今後も目が離せませんね!


