MariaDBを業務システムで利用している企業にとって、各バージョンのサポート期限(EOL)は重要な運用判断基準です。2025年以降、MariaDB LTSのサポート体制が大きく変更され、多くの企業が計画的なアップグレードや移行を迫られています。本記事では、MariaDBの最新サポート期限一覧と、EOL後に発生する深刻なリスク、そして実践的な対策方法について詳しく解説します。
MariaDBのサポート期限とは?押さえておきたい基礎知識
MariaDBのサポート期限を理解する前に、EOL(End of Life)という概念と、LTS(Long Term Support)版の仕組みについて確認しましょう。これらの知識は、安全なデータベース運用を継続するための基盤となります。
EOL(End of Life)とは何を意味するのか
EOLとは、MariaDBの開発チームが特定のバージョンに対してサポートを終了することを指します。EOLに到達すると、そのバージョンはセキュリティパッチや不具合修正の提供が停止されます。
MariaDBでは、各バージョンに対して「フルサポート期間」と「セキュリティパッチ提供期間」が設定されています。フルサポート期間では新機能追加や一般的な不具合修正が提供されますが、その後は重要なセキュリティ問題のみに対応するベストエフォート期間に移行します。
MariaDBのサポートの種類
MariaDB の各バージョンには、運用環境のニーズに応じて「長期サポート(LTS: Long-Term Support)」と「短期サポート(STS: Short-Term Support)」の2つのサポート形態が用意されており、それぞれ明確な特徴と適用場面があります。
LTS(長期サポート)は、リリース後 3年間、バグ修正やセキュリティアップデートが提供されます(※MariaDB 11.4 以前は5年間)。本番環境での安定稼働を重視する企業や組織に最適で、頻繁なバージョンアップによる運用負荷を軽減し、システムの安定性を中長期的に維持できるメリットがあります。
STS(短期サポート)は、リリース後 1年間のみサポートされます。最新機能をいち早く導入したい開発環境や、積極的な技術革新を求める環境に適しており、新機能の検証や次期システムの技術選定において重要な役割を果たします。
企業の計画的なアップグレード戦略や中長期的な移行計画の策定においては、現在利用中のMariaDBバージョンがどちらのサポート形態に該当するかを正確に把握し、サポート終了日を明確にしておくことが、システムの継続的な安全性確保と運用コストの最適化において極めて重要な要素となります。
バージョンごとのLTSとサポート期限一覧
MariaDBのバージョン別サポート期限を正確に把握することは、計画的なアップグレードや移行戦略の立案に不可欠です。以下の表は、主要なMariaDBバージョンのサポート状況をまとめたものです。
バージョン | LTS区分 | リリース日 | フルサポート終了日 | セキュリティパッチ終了日 |
MariaDB 10.5 | LTS | 2020年6月 | 2023年6月24日 | 2025年6月24日(終了済み) |
MariaDB 10.6 | LTS | 2021年7月 | 2024年7月 | 2026年7月 |
MariaDB 10.11 | LTS | 2023年2月 | 2026年2月 | 2028年2月 |
MariaDB 11.4 | LTS | 2024年5月 | 2029年5月 | 2033年1月 |
MariaDB 11.8 | LTS | 2025年6月 | 2028年6月 | 2033年10月 |
特に注意が必要なのは、MariaDB 10.5系が2025年6月24日に既にセキュリティパッチ提供を終了している点です。この旧バージョンを使用している企業は、即座にアップグレードを検討する必要があります。
2025年以降のMariaDBでは、LTS版のリリース周期が年1回に変更され、MariaDB 11.4まではLTS版に5年間のサポートが提供されていましたが、それ以降のLTS版では3年間のサポート期間に短縮されています。この変更により、従来より短いサポート期間となるため、より頻繁なアップグレード計画が必要となります。
サポート期限切れのMariaDBを使い続けるリスク
EOLを迎えたMariaDBを継続使用することは、企業にとって深刻なリスクを生み出します。これらのリスクは技術的な問題だけでなく、ビジネス運営やコンプライアンス面にも大きな影響を与える可能性があります。
セキュリティパッチが提供されないことで起こること
サポート期限切れのMariaDBでは、新たに発見された脆弱性に対するセキュリティパッチが提供されません。これにより、データベースが攻撃者の標的となりやすくなり、機密情報の漏洩や不正アクセスのリスクが大幅に増大します。
実際に、サポート終了したデータベースシステムを狙った攻撃事例は数多く報告されています。特にインターネットに接続されたシステムでは、EOL後数週間以内に脆弱性を悪用した攻撃が確認されるケースが多く、早急な対策が必要です。
また、セキュリティパッチの未適用により、GDPR(一般データ保護規則)や個人情報保護法などの法的要件を満たせなくなる可能性があります。これにより、企業は法的責任を問われるリスクに直面することになります。
不具合・障害時の対応コストが増大する理由
サポート期限切れのMariaDBで障害が発生した場合、公式サポートが受けられないため、自社での対応が必要となります。これにより、問題の原因特定から解決まで長時間を要し、システム停止時間が延長される可能性があります。
さらに、EOL後のバージョンでは新しいハードウェアやOSとの互換性問題も発生しやすくなります。これらの問題に対処するためには、専門的な技術知識を持つエンジニアの確保や、外部コンサルタントの活用が必要となり、結果として高額な対応コストが発生します。
特に24時間365日稼働が求められるミッションクリティカルなシステムでは、EOL後の障害対応における業務影響は計り知れません。システム復旧の遅延により、直接的な売上損失だけでなく、顧客信頼の失墜という長期的な影響も発生する可能性があります。
サポート外の状態が監査リスクになる可能性
多くの企業では、内部監査や外部監査において、ITシステムのサポート状況が重要な評価項目となっています。EOL後のMariaDBを使用している場合、これが監査における重大な指摘事項となる可能性があります。
特に金融機関や医療機関などの規制が厳しい業界では、サポート期限切れのソフトウェア使用が業務改善命令や営業停止処分の対象となる場合があります。また、上場企業では、ITリスク管理の不備が株主総会での指摘事項となることもあります。
さらに、サプライチェーンにおいてもEOL後のソフトウェア使用は問題視されることが多く、取引先企業からの信頼失墜や契約解除のリスクも存在します。これらの監査リスクを回避するためには、計画的なアップグレードや代替ソリューションの検討が不可欠です。
自社のMariaDBバージョンとサポート状況の確認方法
適切なEOL対策を講じるためには、まず現在使用しているMariaDBのバージョンと、そのサポート状況を正確に把握することが重要です。ここでは、実際の確認手順と注意点について解説します。
バージョンの確認手順と主な注意点
MariaDBのバージョン確認は、以下のSQLコマンドを使用して行います。データベースに接続した状態で「SELECT VERSION();」を実行することで、現在使用しているバージョン情報を取得できます。
また、コマンドラインからは「mysql –version」または「mariadb –version」コマンドでも確認可能です。ただし、これらのコマンドはクライアントのバージョンを表示するため、実際のサーバーバージョンとは異なる場合があります。
複数のMariaDBインスタンスを運用している場合は、すべてのインスタンスについて個別にバージョン確認を行う必要があります。特に開発環境、テスト環境、本番環境でバージョンが異なることがあるため、環境ごとの管理表を作成することを推奨します。
LTS対象バージョンかどうかを見分けるポイント
MariaDBのバージョン番号から、そのバージョンがLTS対象かどうかを判断することができます。現在のLTS版は10.6、10.11、11.4、11.8となっており、これらのバージョンでは長期サポートが提供されています。
LTS版以外の通常版(10.7、10.8、10.9、10.10など)は、リリースから約1年後にサポートが終了します。これらのバージョンを使用している場合は、早急にLTS版への移行を検討する必要があります。
また、メジャーバージョンの違いにも注意が必要です。MariaDB 10.x系列と11.x系列では、機能や仕様に大きな違いがあるため、アップグレード時には十分な検証が必要です。特に10.x系列から11.x系列への移行では、アプリケーションの動作確認を慎重に行うことが重要です。
MariaDBのEOL対策として今すぐ検討すべき選択肢
MariaDBのサポート終了(EOL)が迫る中、リスクを回避し安定運用を続けるためには適切な対策が不可欠です。以下の5つの選択肢を検討し、自社の状況に最適な解決策を選びましょう。
最新LTS版へのバージョンアップ
最新のLTS版(Long-Term Support)へのアップグレードにより、公式のセキュリティパッチやバグ修正を継続的に受けられます。無償での継続サポートと安全性向上が期待できる一方、アプリケーション互換性の検証やダウンタイムの準備が必要です。
MariaDB Enterprise サブスクリプション契約
MariaDB社が提供する商用サポートサービスを契約することで、EOL後も延長サポートと技術支援を受けられます。セキュリティアップデートと優先サポートが保証される反面、ライセンス費用が発生します。
クラウドマネージドDBサービスの利用
Amazon RDS for MariaDBなどのマネージドサービスへの移行により、バージョン管理とパッチ適用を自動化できます。運用負荷軽減や自動バックアップ・スケーリング機能が利用可能です。ただし、Azure Database for MariaDBは2025年9月19日に廃止予定のため、Azure Database for MySQL Flexible Serverへの移行が推奨されています。Google Cloud SQLはMariaDBをネイティブサポートしていないため、事前確認が必要です。
別の互換データベースへの乗り換え
MySQL 8.0やPostgreSQL互換のフォーク(Percona Serverなど)への移行により、EOLの影響を回避できます。既存SQL資産を活用しやすい利点がある一方、一部機能差異によるアプリケーション改修が必要になる場合があります。
サードパーティ製延長サポートサービスの活用
コンサルティング会社やSIerが提供する延長パッチサービスを利用することで、セキュリティ対応を継続することが可能です。短期間でコストを抑えつつEOLリスクを回避できますが、サポート品質や対応範囲が契約先に依存するリスクがあります。
サポート期限切れでも安心できるスマートスタイルの「オープンソースDBサポート」の実力
MariaDBのEOL後も安全な運用を継続するためには、専門的なサポートサービスの活用が有効です。スマートスタイルのオープンソースDBサポートは、オープンソースデータベースの第三者サポートとして、多くの企業に選ばれています。
MariaDBに特化した専門エンジニアによる障害対応
スマートスタイルのオープンソースDBサポートでは、MariaDBに精通した専門エンジニアが24時間365日体制で障害対応を行います。これらのエンジニアは、MariaDBのソースコードレベルでの深い知識を有しており、複雑な問題に対しても迅速な解決策を提供できます。
重要度1(本番環境の停止)の問題については、夜間・休日を問わず即座にサポートが開始されます。EOL後のMariaDBで発生する予期しない問題に対しても、豊富な経験と技術力を活かした対応が可能です。
また、障害対応だけでなく、予防保全的な観点からのアドバイスも提供します。システムの健全性チェックや設定見直しの提案など、トラブル発生を未然に防ぐためのサポートも充実しています。
MySQL互換DBもまるごと支援する柔軟な体制
スマートスタイルのサポートは、MariaDBだけでなく、MySQL、Percona Serverなど、MySQL互換データベース全般に対応しています。これにより、将来的なデータベース移行時にも継続的なサポートを受けることが可能です。
さらに、異なるデータベース間の移行支援も提供しており、MariaDBからMySQLへの移行や、クラウドデータベースサービスへの移行時にも専門的なサポートを受けられます。
この柔軟な対応により、企業は長期的なデータベース戦略を立てやすくなり、技術的な制約に縛られることなく、ビジネス要件に応じた最適な選択が可能になります。
HA構成・レプリケーション・Percona製品にも対応
企業システムでは、高可用性(HA)構成やレプリケーション設定が重要な要素となります。スマートスタイルのOSS DBサポートでは、これらの複雑な構成に対しても専門的なサポートを提供しています。
MariaDB Galera Clusterやレプリケーション構成での障害対応、性能チューニング、設定変更など、幅広い技術的課題に対応できます。また、Percona XtraBackupやPercona Toolkitなどの関連ツールについてもサポート対象となっています。
これらの高度な機能を活用することで、EOL後のMariaDBでも、エンタープライズレベルの可用性と性能を維持することが可能になります。
オープンソースDBサポート導入で得られる4つの効果
専門的なサポートサービスの導入により、企業は技術的な安心感だけでなく、運用効率の向上やコスト最適化など、多面的なメリットを享受できます。
システム障害の初動対応が速くなる
オープンソースDBサポートの導入により、システム障害発生時の初動対応が大幅に迅速化されます。24時間365日の監視体制により、問題の発生を早期に検知し、専門エンジニアによる即座の対応が可能になります。
従来の社内対応では、担当者の連絡確認から現状把握、対応方針の決定まで数時間を要していた場合でも、専門サポートでは問題報告から30分以内に対応を開始できます。
特にEOL後のMariaDBで発生する未知の問題に対しても、豊富な経験と技術力により、迅速な問題解決が期待できます。この迅速な対応により、システム停止時間を最小限に抑制し、ビジネスへの影響を大幅に軽減することが可能です。
社内の技術負荷が大幅に軽減される
MariaDBの専門知識を持つエンジニアの確保や育成は、多くの企業にとって大きな負担となっています。オープンソースDBサポートの活用により、これらの技術的な負荷を外部の専門チームに委ねることができます。
社内のITエンジニアは、データベースの細かな技術的問題から解放され、より戦略的なシステム開発や業務改善に集中できるようになります。これにより、IT部門全体の生産性向上と、エンジニアのモチベーション向上につながります。
また、EOL後のMariaDBに関する最新情報や技術動向についても、専門サポートから定期的に情報提供を受けることで、社内での情報収集負荷を軽減しながら、常に最新の技術情報を把握することが可能になります。
コスト最適化とリスク回避が同時に叶う
専門サポートの導入は、一見するとコスト増加に見えますが、実際には総合的なコスト最適化効果があります。システム障害による業務停止時間の短縮、専門エンジニアの採用・育成コストの削減、予期しない障害対応費用の削減など、様々な面でのコスト効果が期待できます。
さらに、EOL後のMariaDBで発生する可能性のある深刻な問題を事前に回避できることで、大規模なシステム障害や情報漏洩などの重大なリスクを防ぐことができます。
これらのリスク回避効果を金額に換算すると、サポート料金を大幅に上回る価値があることが多く、投資対効果の観点からも有効な選択肢となります。
他部門からの「信頼されるIT部門」へ変わるきっかけに
安定したデータベース運用により、IT部門に対する社内の信頼度が向上します。システム障害の発生頻度減少や、問題発生時の迅速な対応により、業務部門からの評価が高まることが期待できます。
また、専門サポートからの技術的アドバイスを活用することで、より先進的なシステム提案や改善提案ができるようになり、IT部門の戦略的地位向上にもつながります。
このような信頼関係の構築により、IT部門は単なる「システム維持管理部門」から、「ビジネス成長を支える戦略的パートナー」へと役割を変化させることが可能になります。
MariaDBのサポート期限に不安がある方へ
MariaDBのサポート期限に関する不安や疑問をお持ちの方に向けて、専門的な相談や支援を受けるためのプロセスについて説明します。適切なサポートを受けることで、安心してデータベース運用を継続することができます。
専門家による診断・見積・導入支援の流れ
オープンソースDBサポートの導入検討では、まず現在のシステム状況を正確に把握するための診断が実施されます。この診断では、使用しているMariaDBのバージョン、システム構成、業務要件、現在の運用体制などを詳細に調査します。
診断結果に基づいて、お客様の状況に最適なサポートプランの提案と詳細な見積が提供されます。この際、現在のリスクレベルや推奨される対応策、導入効果の試算なども含めた包括的な提案が行われます。
導入決定後は、専門エンジニアによる導入支援が実施されます。既存システムへの影響を最小限に抑えながら、スムーズなサポート体制への移行が可能になります。また、導入後の運用方法や緊急時の連絡手順についても詳細な説明が行われます。
1サーバーから契約できる柔軟なサポートプラン
オープンソースDBサポートでは、企業規模や予算に応じて選択できる柔軟なサポートプランが用意されています。最小1サーバーから契約可能で、小規模なシステムでも専門的なサポートを受けることができます。
プラン | 1サーバー | 5サーバー | 25サーバー | 50サーバー |
スタンダード(標準サポート) | 528,000円 | 1,584,000円 | 6,600,000円 | 10,560,000円 |
スタンダード(24/365サポート) | 686,400円 | 2,059,200円 | 8,580,000円 | 13,728,000円 |
エンタープライズ(標準サポート) | 792,000円 | 2,376,000円 | 9,900,000円 | 15,840,000円 |
エンタープライズ(24/365サポート) | 1,029,600円 | 3,088,800円 | 12,870,000円 | 20,592,000円 |
※価格は年間契約、税込み表示
出典:オープンソースDBサポート|株式会社スマートスタイル公式サイト
スタンダードプランでは基本的な技術サポートと障害対応を、エンタープライズプランではより高度なコンサルティングサポートとソースレベルの調査も提供されます。24/365サポートオプションでは、本番環境停止時に夜間・休日を問わず即座にサポートを受けることが可能です。
まとめ
MariaDBのサポート期限とEOL後のリスクについて、現在の状況から具体的な対策まで包括的に解説しました。2025年以降の新しいサポート体制により、より計画的なアップグレード戦略が必要となっています。
- MariaDB 10.5系は2025年6月に既にEOL到達、即座のアップグレードが必要
- 2025年以降のLTS版は最大5年サポート(フルサポート3年+セキュリティパッチ2年)
- EOL後の継続使用は深刻なセキュリティリスクと監査リスクを発生
- アップグレード前の詳細な互換性検証と計画立案が成功の鍵
- 専門的なサポートサービスの活用により安全な運用継続が可能
- オープンソースDBサポートは1サーバーから契約できる柔軟なプランを提供
MariaDBのサポート期限に不安をお持ちの方は、まず現在のシステム状況を正確に把握し、専門家による診断を受けることをおすすめします。適切な対策により、安全で効率的なデータベース運用を継続することができます。