MySQLとMariaDBの基本情報(はじめての人向け)
MySQLとは?
MySQL(マイエスキューエル)は、世界で最も広く使われているオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の一つです。1995年に開発され、使いやすさ、高速な処理性能、信頼性の高さからWebサービスをはじめとする多くのシステムで採用されています。
特に、LAMP(Linux, Apache, MySQL, PHP)環境の中核を担う存在として、オープンソースのWeb開発におけるデファクトスタンダードとなりました。
MySQLは、オープンソースであることによる導入のしやすさやカスタマイズの自由度に加え、その実績ある性能や信頼性、スケーラビリティが高く評価され、WordPress、Facebook、YouTubeなどの大規模サービスでも基盤技術として長年利用されています。
MySQLは2008年にSun Microsystemsによって買収され、その後2010年にOracleがSun Microsystemsを買収したことでオラクル(Oracle)社の所有となりました。
現在は、Oracle(オラクル)社が開発と保守を主導しており、多くの開発者を抱えながら開発体制を管理しています。ただし、これはあくまでオープンソースソフトウェアであり、有志によるパッチやコードの反映も数多く行われているため、一般的なオープンソースライセンスの下での開発体制も維持されています。また、エンタープライズ用途向けに商用ライセンスも提供されています。
MariaDBとは?
MariaDB(マリアディービー)は、MySQLからフォーク(派生)して開発されている、高い互換性を持つオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)です。ソースコードは主にGPLv2 (GNU General Public License version 2) のもとで公開されており、これにより誰でもソースコードを利用・改変でき、コミュニティによる開発への貢献が促進されています。
MariaDBの大きな特徴は、MySQLとの互換性を重視しながらも、コミュニティ主導によるオープンな開発体制のもと、独自の機能追加や性能改善を積極的に行っている点です。例えば、分析用途に適したColumnStoreストレージエンジンや、データの変更履歴を自動で記録するシステムバージョン管理テーブル (System-Versioned Tables)、多数のクライアント接続を効率的に処理するためのスレッドプール機能の標準搭載などは、MySQLにはない、あるいは異なるアプローチで実装されているMariaDBの特徴的な機能と言えます。
MariaDBは、MySQLと同じ開発者によって立ち上げられており、今もなおMySQLからのスムーズな移行が可能な点から、企業や団体による導入も増えています。
なぜMariaDBが登場したのか(フォークの背景)
MariaDBが登場した背景には、MySQLの商用化によって、将来の開発方針やライセンスへの不安を感じた一部のコミュニティから、フォークの動きが生まれました。
このような中で、MySQLの創始者であるMichael “Monty” Widenius氏が、MySQLの自由な進化とオープンソースの精神を守るためにMariaDBを立ち上げました。MariaDBという名前は、Monty氏の娘「Maria」にちなんで名付けられています。
MariaDBは、MySQLの完全な代替として機能することを目指しており、コアとなるストレージエンジンやSQL構文の互換性を重視しながらも、オープンで透明性のある開発体制を採用しています。
その結果、商用サポートに依存せず、自由にカスタマイズ・導入できる選択肢としてMariaDBは注目を集めるようになりました。
MySQLとMariaDBの共通点|同じRDBMSとしての基本性能
ACID準拠やSQL互換性
MySQLとMariaDBはいずれも、ACID(原子性・一貫性・独立性・永続性)を満たすトランザクション処理が可能なリレーショナルデータベースです。これにより、金融システムや業務アプリケーションなど、正確性と整合性が重視される場面でも安心して利用できます。
また、両者はSQLの文法においても高い互換性を持ちます。基本的なSELECT文、INSERT文、JOINなどの操作に違いはほとんどなく、MySQL用に作成されたSQLスクリプトは、特にMySQL 5.x系までは多くの場合そのままMariaDBでも動作します(※MySQL 8.0以降では認証方式や一部機能の違いに注意が必要です。)
このような互換性の高さは、開発者にとって大きなメリットであり、将来的な移行や共存も視野に入れやすくなっています。
オープンソースベースの開発思想
MySQLとMariaDBはいずれもオープンソースとして公開されており、世界中の開発者がそのコードを閲覧・改良できる仕組みとなっています。これにより、セキュリティホールの迅速な修正や、ニーズに応じた機能追加が可能です。
オープンソースの理念に基づくこの体制は、ベンダーロックインを避けたい企業や、独自のカスタマイズを求める技術者にとって、大きな安心材料となります。
セキュリティと信頼性の確保
どちらのデータベースも、強力なセキュリティ機能と信頼性を備えています。例えば、ユーザーアカウントごとのアクセス制御、SSLによる暗号化通信、監査ログの取得、脆弱性の修正パッチの迅速な提供など、実運用に耐える堅牢なセキュリティ体制が整っています。
さらに、両者とも長年の運用実績があり、世界中で数え切れないほどの導入事例があります。これにより、ノウハウの蓄積や情報共有も盛んであり、万が一のトラブル発生時にも対応策が見つけやすいという利点があります。
MySQLとMariaDBは、いずれも「業務で安心して使える」信頼性の高いRDBMSと言えるでしょう。
MySQLとMariaDBの違いを比較【一目でわかる一覧表つき】
ライセンス種別
MySQLとMariaDBはどちらもオープンソースのリレーショナルデータベースですが、そのライセンス形態には明確な違いがあります。MySQLはオラクル社が保有するデュアルライセンスモデルを採用しており、GPL v2ライセンスに基づくコミュニティ版と、商用利用向けの有償ライセンスが存在します。そのため、MySQLを商用プロジェクトで利用する際は、ライセンス形態や使用条件を確認のうえ、必要に応じて適切なエディションの選定を行うことが推奨されます。
一方、MariaDBもGPL v2ライセンスに基づくオープンソースソフトウェアとして提供されていますが、商用ソフトウェアパッケージやサポートサービスも用意されています。MariaDB Corporationは一部のコンポーネントに対して独自ライセンスであるBSL(Business Source License)を採用しており、これは一定期間後にGPLなどのオープンソースライセンスへと変化する仕組みです。MariaDB Foundationによってコミュニティ主導の開発も支えられており、オープンソース哲学を重視しつつ、商用ニーズに応える柔軟なライセンス体系を持っている点が特徴です。
開発体制・サポートの違い(Oracle vs MariaDB Foundation)
MySQLは現在、オラクル社によって開発・保守されています。オラクル社は商用サポートやエンタープライズ向け機能を重視しており、MySQL Enterprise Editionではセキュリティや監査、バックアップなどの高度な機能が提供されています。ただし、こうした機能は有償で提供され、オープンソース版のMySQL Community Editionでは利用できない点に注意が必要です。
一方、MariaDBはMySQLの創設者であるMichael “Monty” Widenius氏を中心に設立されたMariaDB Foundationによって開発されています。MariaDBは、オープンソースの精神を維持することをミッションとしており、エンタープライズ向け機能もコミュニティ向けに積極的に公開されています。また、MariaDB Corporationからは商用サポートも提供されており、商用ニーズに対応しながらもオープンな開発を維持しています。
パフォーマンス(スレッド処理・クエリ最適化など)
MariaDBでは、スレッドプール機能がCommunity Editionでも利用可能であり、多数のクライアント接続が発生するような高負荷環境において、効率的なスレッド管理が可能です。一方、MySQLで同様のスレッドプール機能を使用するには、Enterprise Editionの契約が必要となります。
また、MariaDBはクエリオプティマイザに関しても機能追加を継続的に行っており、年次のメジャーリリースごとに新機能が導入されています。一方、MySQLは8.0の中で段階的に改善を加えるモデルを採用しており、新機能の導入は比較的慎重な傾向があります。
ただし、一般的な中〜小規模のアプリケーションでは、両者のパフォーマンス差は環境や設定に依存することが多く、明確な優劣をつけることは困難です。そのため、ユースケースに応じたベンチマークテストが重要です。
機能の違い(JSON, 仮想列, カラム型など)
MySQLとMariaDBは、かつては高い互換性を保っていましたが、近年では機能面での独自性が際立ちつつあります。特にJSONや仮想列、カラム型の扱いにおいて、両者の実装方針は異なります。
MySQLでは、JSON型がネイティブにサポートされており、MySQL 5.7以降ではJSONデータ型を利用した構造化データの格納や検索が可能です。また、JSON_EXTRACTやJSON_ARRAYAGGなどの関数も豊富に用意されており、JSONを扱うWebアプリケーションやAPIと親和性の高い設計になっています。
一方、MariaDBではJSON専用型は存在せず、内部的にはLONGTEXT型でJSONを扱う実装となっています。MariaDB 10.2以降ではMySQL互換のJSON関数が一部サポートされているものの、JSONのバイナリ格納やネイティブ最適化といった面ではMySQLに比べて機能が限定的です。
仮想列(Generated Columns)については、両者ともにサポートしており、MySQL 5.7およびMariaDB 5.2以降で使用可能です。ただし、MariaDBでは永続仮想列(PERSISTENT)と即時計算型(VIRTUAL)の両方がサポートされており、柔軟性の面でやや先行しています。
カラム型に関しては、MariaDBがより積極的な拡張を行っています。MariaDBでは、動的カラム(Dynamic Columns)のサポートにより、スキーマの固定化を避けながら柔軟なデータ設計が可能です。さらに、ColumnStoreによるカラムナ型ストレージエンジンも提供されており、大規模な分析処理用途での活用が期待されています。
一方、MySQLでは標準的な行指向のストレージエンジン(InnoDBなど)が主流であり、分析処理向けの最適化はAuroraやHeatWave(いずれもクラウド版)に依存する傾向があります。
総じて、MySQLはLAMP環境やCMS、業務系システムなどで広く利用されるWebアプリケーション向けに、安定性・後方互換性を重視しながら汎用的な機能を堅実に強化しています。
一方でMariaDBは、MySQLにはない分析用途や特殊構成に強みを持つ独自機能を積極的に導入しており、柔軟性の高いデータ構造設計や拡張性を求めるシステムに適した選択肢となっています。
そのため、ミッションクリティカルな業務における信頼性や実績を重視する場合はMySQLが適しており、一方で、分析処理やカスタマイズ性、クラスタ構成の自由度を重視する場合にはMariaDBが優位となるケースもあります。
最終的な選定は、システムの用途・将来的な拡張性・ライセンスポリシーなどの要件を総合的に判断する必要があります。
拡張性と将来性(ロードマップ・アップデート頻度)
MariaDBとMySQLは拡張性や将来性の面でも方針が異なります。MariaDBはMySQLとの互換性を基盤としつつ、独自のストレージエンジン(Aria、ColumnStoreなど)や機能(System VersioningやSpiderエンジンなど)を積極的に導入しており、特定用途に特化した機能拡張が特徴です。 一方、MySQLはOracle社の管理の下、長期サポート(LTS)や安定性を重視したアップデートが行われており、企業システムにおける信頼性確保が強みです。
メジャーリリースの頻度については一見するとMariaDBのほうが多いように見えますが、そもそも両者のリリースモデルが異なります。MariaDBはバージョン10.6以降で現在のリリースモデルを採用しており、MySQLも8.1以降ではこれに近いモデルへと移行しています。MariaDBはコミュニティ主導で頻繁なマイナーアップデートが行われる傾向にあり、新機能の導入サイクルも比較的早いのが特徴です。一方、MySQLはOracleによる品質管理と長期サポート方針により、機能追加の慎重さと長期的な安定性が重視されており、それぞれのロードマップには明確な開発哲学の違いが表れています。そのため、単純なリリース頻度の比較では一概に優劣を判断することはできません。
将来性については、MariaDBがMySQLとの完全な互換性から徐々に独自路線を進んでいる点に留意が必要です。MariaDBはバージョン10.x以降で独自の最適化や機能追加を加速させており、SQL構文やシステム挙動においてMySQLとの差異が拡大しつつあります。例えば、デフォルト設定の違いや互換性のないストレージエンジンの採用により、将来的にアプリケーションの移行や相互運用性が困難になるケースが想定されます。この点は、MariaDBが「MySQLの代替」から「独立したDBMS」へとシフトしつつあることを示唆しています。
クラウド/ホスティング環境での取り扱い(Amazon RDS, GCP など)
MySQLは、AWS(Amazon RDS)、Google Cloud SQL、Microsoft Azure Database for MySQL など、主要なクラウドプラットフォームでネイティブにサポートされており、商用サービスとしての実績も非常に豊富です。とくにAmazon RDSでは、高可用性を実現するマルチAZ構成や自動バックアップ、スナップショット、監視機能といったマネージドサービスが提供されており、企業システムにおける安定した運用基盤として広く採用されています。
MariaDBも近年ではクラウド環境での導入が拡大しており、Amazon RDS for MariaDB に加え、MariaDB Corporation自身が提供するマネージドサービスである SkySQL も注目されています。SkySQLは、クラウドネイティブな設計とともに、ColumnStoreやGalera Clusterのサポート、マルチリージョンレプリケーションなど、エンタープライズ向けの高度な要件に応える機能を備えています。
総じて、MySQLの方がクラウド業界における導入実績と成熟度の面で優位にありますが、MariaDBもSkySQLなど独自の差別化を進めており、用途や導入方針によって柔軟な選択が可能な時代になってきています。特に、オープンソースへのこだわりや、MySQL互換を保ちつつ新機能を活用したいユーザーにとっては、MariaDBは有力な選択肢となり得ます。
比較表(まとめ)
比較項目 | MySQL | MariaDB |
ライセンス種別 | デュアルライセンス(GPL v2 + 商用ライセンス) | オープンソース(GPL v2)+期限付きのBSL(Business Source License) |
開発体制・サポートの違い | Oracle社が開発・管理。
商用サポートはOracleが提供 |
MariaDB Foundation(非営利団体)が開発方針を主導、MariaDB Corporationが商用サポートを提供 |
パフォーマンス | スレッドプールなど一部の高機能はEnterprise限定
全体として安定性重視 |
スレッドプール機能をCommunity版でも利用可 |
機能追加の傾向 | 保守的。新機能の導入は慎重で後方互換性を重視 | 独自機能の導入に積極的
例:System Versioning、Dynamic Columns、Spiderエンジンなど |
拡張性・将来性 | 安定・堅実だが進化はややゆっくり。 | MySQLとの互換性を保ちつつ独自路線を進行中。将来的には互換性の乖離も視野に |
クラウド対応 | AWS, GCP, Azure など主要クラウドで広く採用。
RDS for MySQLの実績豊富 |
RDS for MariaDB に加え、MariaDB Corporationが提供するSkySQLによりエンタープライズ対応も進行中 |
MySQLとMariaDBの互換性と非互換性
MySQLとMariaDBは、もともと同じコードベースから派生しており、高い互換性がありますが、バージョンが進むにつれて非互換も徐々に増えています。以下に代表的な互換性と非互換性のポイントを整理します。
✅ MariaDBとMySQLの互換性
項目 | 内容 |
SQL構文 | 基本的なSQL文法はほぼ同じ(SELECT, INSERT, UPDATE, DELETEなど) |
データ型 | INT, VARCHAR, TEXT, DATEなど、主要なデータ型は共通 |
ストレージエンジン | InnoDBは両方でデフォルトエンジンとして共通。AriaはMariaDB独自だがMyISAMと類似 |
クライアント/接続 | MySQL用のクライアント・ドライバ(JDBC, PHP, Pythonなど)がMariaDBにも使えることが多い |
ツール | phpMyAdmin、MySQL Workbench(一部制限あり)などが使える |
❌ MariaDBとMySQLの非互換性(注意点)
分類 | 内容 |
バージョンの進化 | MariaDBとMySQLではバージョン番号が似ていても、実装内容は異なることがある(例:MySQL 8.0とMariaDB 10.6) |
JSON型 | MySQLはネイティブJSON型をサポートしており、関数も豊富。MariaDBではLONGTEXTベースでJSONを扱うため、完全互換ではない |
文字セット・照合順序 | MySQL 8.0ではutf8mb4_0900_ai_ciなど高度な照合順序が導入されたが、MariaDBでは未対応の場合がある |
レプリケーション | MySQLはGTIDレプリケーションやGroup Replicationなど独自機能がある一方、MariaDBはそれと互換でない独自GTIDを使用している |
ストレージエンジン | MariaDBはAria, TokuDB, MyRocksなどを提供(MySQLには存在しない)。TokuDBは10.5以降非推奨 |
一部SQL構文 | MariaDB独自構文(SEQUENCE, VIRTUAL PERSISTENTなど)やMySQL独自構文(WITH CHECK OPTIONの挙動など)で違いがある |
認証方式 | MySQL 8.0のデフォルト認証方式(caching_sha2_password)はMariaDBで未対応 |
補足:移行時の注意点
MySQLからMariaDBへの移行は比較的スムーズ(互換性重視の設計)ですが、MariaDBからMySQLへは注意が必要です。MariaDB独自機能が使われている場合、MySQLで動かない場合があります。
MySQLとMariaDBの選び方|目的・ユースケース別におすすめを解説
OSS・カスタマイズ重視の開発者や中小企業なら?
開発者1〜5名の小規模開発チームや、ライセンスコストを最小限に抑えたいスタートアップ、OSSに理解のあるエンジニアが在籍する企業には、MariaDB Community Editionが適しています。
MariaDBはコミュニティ主導で進化のスピードが早く、カラム型ストレージなどMySQLにはない独自機能も搭載されています。自社での改変・調整を前提に柔軟な構成を行いたい場合には特に有利です。
一方、MySQL Community Editionも無償で商用利用可能で、WordPressやLAMPスタックとの親和性が高く、長年の実績を持つ信頼性の高い選択肢です。
決め方の目安:
- 柔軟性・機能拡張を重視する場合 → MariaDB
- 実績・互換性・安心感を重視する場合 → MySQL
商用サポートや安定運用を重視する企業なら?
SLAや24時間サポートが必要な企業、監査やセキュリティ対策が求められる業界、大規模なDB障害がビジネスに重大な影響を与えるような場合には、MySQL Enterprise または MariaDB Enterprise の導入が検討されます。
MySQL EnterpriseはOracle社が提供しており、MySQL Enterprise Backupや監視機能などの商用向けツールが充実しており、金融や官公庁などミッションクリティカルな環境に適しています。
一方、MariaDB Enterpriseはオープンソースの柔軟性を保ちながら、ColumnStore(分析用途に最適な列指向ストレージ)やMaxScale(プロキシ・ロードバランサ)といった拡張モジュールも提供しており、分析・分散DBにも強みがあります。
決め方の目安:
- Oracle製品との連携や信頼性を重視 → MySQL Enterprise
- 柔軟で拡張的な構成、高性能・分散処理を求める → MariaDB Enterprise
クラウド前提のインフラ構成なら?
AWS、GCP、Azureなどの主要クラウドサービスでは、MySQLが最も広くサポートされており、Amazon RDSなどマネージドサービスの選択肢も豊富です。多くの実績があるため、導入時の安心感も大きなメリットです。
一方で、MariaDBも近年クラウド対応が進んでおり、RDS for MariaDBやMariaDB Corporationが提供するSkySQLなどにより、クラウド環境での運用性が向上しています。
決め方の目安:
- 幅広い選択肢と成熟したエコシステムを活かしたい → MySQL
- 自社に最適な構成や運用の自由度を確保したい → MariaDB
高負荷DBや分析系用途なら?
高負荷なDBや分析系の用途において、MySQLはInnoDBによる安定性やAurora MySQLなどのスケーラビリティに優れており、大規模なトランザクション処理やエンタープライズ向けの信頼性を重視する場合に適しています。一方、MariaDBはGalera Clusterによる高可用性構成や多様なストレージエンジンを活用できる柔軟性が特徴で、OSSベースでの拡張性や自社運用におけるカスタマイズ性を重視する場合に適しています。そのため、安定した処理性能と広く使われる実績を重視するならMySQL、構成の自由度やOSSとしての柔軟性を活かしたい場合にはMariaDBが適していると言えます。
導入実績・利用シーンで比較するMySQLとMariaDB
MySQLの導入事例(YouTube, Facebook など)
MySQLはその歴史の長さと実績の豊富さから、依然として世界中の主要なサービスで使用されています。代表例としては、YouTube、Facebook、X(旧Twitter)などの大規模Webサービスがあり、安定性とスケーラビリティの両面で高く評価されています。
また、多くのレンタルサーバーやCMS(WordPressなど)でもデフォルトでMySQLが採用されており、技術者のスキルセットとの親和性も高いため、導入障壁が低いのも魅力です。
MariaDBの導入事例(Wikipedia, Red Hat など)
MariaDBは多くの有名企業・団体に採用されており、その代表例がWikipediaです。ウィキメディア財団は、MySQLからMariaDBへの移行を完了し、以降はMariaDBをメインのRDBMSとして活用しています。また、Red HatやDebianといったLinuxディストリビューションでもMariaDBを公式サポートしており、オープンソース文化との親和性が非常に高いのが特徴です。
その他、Booking.comやSamsungなどもMariaDBを利用しており、高負荷・大規模システムにおける信頼性の高さが評価されています。2025年現在もクラウドプロバイダーや新興企業での利用が拡大しています。
それぞれの採用理由と評価
MySQLは、安定性と実績、サポート体制、クラウド対応の広さといった点で高い評価を受けています。一方でMariaDBが選ばれる理由には、ライセンスの柔軟性、機能の先進性、コミュニティとの距離の近さが挙げられます。
導入時の判断材料としては、ライセンス方針、システムの規模、開発リソース、将来的な拡張計画などを考慮することが重要です。それぞれの強みを理解し、自社の要件に最適な選択を行うことが、成功の鍵となります。
MySQLとMariaDB、結局どっちを選ぶべき?
判断ポイントのまとめ(チェックリスト形式)
以下のチェックリストを参考に、自社に適したRDBMSを選定しましょう。
✅ 初期費用を抑えて無償で導入・運用したい → MariaDB Community / MySQL Community※どちらもオープンソースで無償で利用可能
✅ オープンソースの思想に共感し、自由な拡張や独自構成を重視したい → MariaDB ※どちらもオープンソースだが、MariaDBは多様なストレージエンジンが標準搭載されており、構成の柔軟性が高い
✅ 企業レベルのサポート体制やSLAを重視 → MySQL Enterprise(商用ライセンス) または MariaDB Enterprise(有償サブスクリプション) ※MariaDB EnterpriseはGPLベースで、商用ライセンス製品ではありませんが、有償のサポートと追加機能を提供
✅ 実績や他システムとの連携のしやすさを重視 → MySQL ※クラウドサービスやCMS(例:WordPress)などでの実績・互換性が高い
✅ ストレージエンジンの選択肢や構成の柔軟性を活かした設計を視野に入れている → MariaDB ※Aria、ColumnStore、MyRocksなど多様なストレージエンジンを標準サポート
✅ 既存システムがMySQLで構築されており、移行リスクを避けたい → MySQL継続
MariaDBとMySQLのどちらがいいか分からない方へ
当社「株式会社スマートスタイル」では、MySQL/MariaDB商用ライセンスの提供およびMySQL/MariaDBの有償サポートを行っています。導入検討中の企業様には、要件ヒアリングを通じて最適な構成をご提案いたします。
サービス資料のご提供や導入相談も可能です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
MariaDBはMySQLの完全な代替になりますか?
MariaDBはMySQLと高い互換性を保っており、多くのケースで完全な代替として機能します。基本的なSQL構文やデータ操作、ストレージエンジンの挙動は非常に似ています。ただし、MySQL独自の機能や、MySQL 8.0以降の一部仕様に依存している場合は注意が必要です。
MariaDBのサポートは有料ですか?
MariaDB自体は無償で利用できますが、MariaDB Corporationが提供する「MariaDB Enterprise」では商用サポートが有償で提供されています。内容には、セキュリティパッチの迅速提供、24時間対応の技術サポート、高可用性構成支援などが含まれます。無償のコミュニティサポートも存在しますが、業務利用では有償サポートの導入をおすすめします。
MariaDB Enterpriseにご興味がある場合は以下を参照ください。
>>>MariaDB Enterpriseサブスクリプションの詳細
クラウド環境での利用に制限はありますか?
MariaDBもMySQLも主要クラウドサービス(AWS、GCP、Azure)で利用可能です。MySQLはクラウドプラットフォームでのデフォルトサポートが広く、MariaDBも「Amazon RDS for MariaDB」や「SkySQL」といったクラウドサービスで利用可能です。
ただし、一部クラウドサービスではMariaDBの最新機能が即時には利用できない場合もあるため、必要に応じてバージョン確認や構成検討が必要です。
まとめ|MySQLとMariaDBの違い・選び方のおさらい
MySQLとMariaDBはどちらも信頼性の高いオープンソースRDBMSであり、ACID準拠やSQL互換性といった共通点を持っています。一方で、ライセンス形態や開発体制、機能の拡張性、商用サポートの有無などには明確な違いがあります。
選択にあたっては、企業の方針や開発体制、将来的な拡張性、コストなどを総合的に見極めることが重要です。
今後の技術選定においては、単に「どちらが優れているか」ではなく、
- 自社のシステムの要件(性能、コスト、可用性)
- 拡張性や将来の構想
- 外部サービスやクラウドとの親和性
- ベンダーロックインのリスク
などを踏まえて中長期的な視点で検討することが重要です。また、MySQLとMariaDBは互換性があるとはいえ、細かな非互換が今後増える可能性もあるため、最新の情報を常にチェックしながら判断していくことが求められます。
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