いよいよ最終日を迎えたPercona Live Session Day 2のレポートをお伝えします。
まずは、Day1 同様 Keynote から幕を開けました。
Welcome Back
Day1 に続いてPercona社のMatt氏が壇上にあがりました。特に新しい情報などはありませんでしたが、Keynoteの講師を紹介する時のテンションの高さがすごく印象的でした(自分は3日目に突入し少々疲れもあったので…)。
The State of the Dolphin
Oracle社のFrédéric氏によるキーノートです。同氏がブログで公開しているMySQL InnoDB Clusterの検証記事などは、弊社でもかなり参考にさせて頂いています。@lefredというtwitterアカウント名でも有名ですね。
今回のPerconaLiveでは時間帯の都合上、Frédéric氏のセッションにほとんど参加できていなかったので、このキーノートで話を聞くことができて良かったです。
講演の内容は、GAリリースから約1年が経過した MySQL 8.0 についての解説でした。既に国内外で様々な情報が存在していますが、このタイミングでOracle側から最新のマイナーバージョンまでを踏まえた(1年で6つのバージョンがリリースされました)情報のアップデートが提供されるのは非常にありがたかったです。
MySQLの現在のトレンドは「SQL + NoSQL」であり、その証拠にMySQL8.0ではJSON型に関連した機能や関数が大幅に強化されています。キーノートでもこの点が特に強調されていました。
また、Day1でPeter氏が触れていた「MicroService, Kubenetes, Security」の3つのキーワードについても、”actually fact”と同調していました。今後、これらについてもMySQL側が一層改善していく可能性がありそうですね。
最後に、Frédéric氏はMySQL Community 向けのSlackを管理しているようで、イベント参加者に向けてJOINを呼び掛けていました。もし興味があれば、登録してみてはいかがでしょうか?
→ 詳細
What is the new of POLARDB
近年急成長を遂げている中国の Alibaba Cloud が、自分たちでOSSDBを開発していることはご存知でしょうか?それがMySQL互換の「POLARDB」です。このキーノートでは、その概要の紹介と、MySQLとのパフォーマンス比較(ベンチマーク)に関する説明が展開されました。
POLARDBの特徴の一つが「parallel query」であり、これはMySQLでもまだ実装されていません。MySQLでは1セッション(スレッド)につき1つのクエリしか実行できず、クエリの並列実行のためには複数スレッドを同時接続して実行する必要があり、昨今のマルチプロセッサー環境では限界があるとされてきました。POLARDBの同機能を使えば、そのクエリ実行をセッション内で並列化できるので、スループットが格段に改善されます。下のグラフでは、その「リニア」な性能向上が示されています。
また、Alibaba Cloud では sysbench を使って、MySQLとのベンチマーク比較を多く実施しているようです。以下はその一例ですが、たしかにPOLARDBの性能面での優位性が示されています。
POLARDBの今後の展望としては、「マルチマスタ対応」や「Fast and Instant DDL」を予定しているそうです。さらには「HTAP」も見据えているとのことなので、かなり精力的に開発が行われていると考えられます。
POLARDBはクラウドに最適化されたDBなので、個人レベルで細かな検証は難しいかもしれませんが、今後注目していきたいと思いました。
The Color of Open Source Money – Are some open source business models more acceptable than others?
ここまで技術的なキーノートが続いていましたが、ここでビジネス色の濃いセッションがきました。スピーカーはContinuent社のEero氏です。同社はMySQLの高可用性ソリューション「Tungsten」の開発元として有名です。
話の概要としては、オープンソース(特にMySQL)を利用して企業はどのようにお金を稼ぐのか、ビジネスモデルについての説明されました。具体的には以下のような例が述べられました。
(1) MySQLコンサルティング
Percona, Pythian, Datavail
(2) 商用パッケージ
Continuent, Oracle, MariaDB, Vivid Cortex
(3) MySQLクラウド
AWS Aurora, Azure, GCP, Oracle Cloud, Scale Grid
→ Continuent社もここへの参入を目指しているそうです
(4) VC To Exit(いわゆる企業買収)
Clustrix ($71.1M), KICKFIRE ($25M), INFOBRIGHT ($22.5M), ScaleArc ($51.2M), ScaleDB ($2.1M) …
また (1)~(3) の項目について、実際の企業をピックアップして具体的な説明もありました。
Perconaのケース
- サービスで稼ぐ = 保守サポート / コンサルティング
- 提供するソフトウェアは全てGPLライセンス(Percona Server, Percona XtraBackup, PMM)
- PXC は少し特殊( Galera by codership を組み込んでいるから)
- AWS Aurora 向けのサポートも提供 = クラウドの分野にも進出
Continuentのケース
- Tungsten を販売することで利益を得る
- クラウド対応のオファーもある
- 世間の潮流に合わせて変化していきたい
Amazon
- “Aurora is the fastest growing ever !” by Amazon CEO
- DBaaS は最早必須
- オープンソースに寄生しているのでは?という批判もある
オープンソースに関わる企業が「どのように」利益を出していくのかには、それぞれ特色があります。弊社もその中の一つなので、改めて考えさせられる内容でした。
Bringing DevOps To The Database
次のKey noteは、データベース監視ツールを開発する VividCortex の Baron氏による「DevOps」の話でした。
「Faster, Better, Cheaper」を標榜するDevOpsは、今や世界的な潮流となっています。
Google が提唱する『Toil』や『SRE』といったキーワードを一度でも聞いたことがある人は多いでしょう。
では、具体的に「Database DevOps」と言った時、どのようなものを指すのでしょうか。
Baron氏は、以下のページで述べられている「Dickerson’s ヒエラルキー」が分かりやすいと指摘します。
https://landing.google.com/sre/sre-book/chapters/part3/
曰く、技術戦略として以下3つの柱が存在しており、DevOpsはその中の一つに含まれるそうです。
- Database Hosting & Tech Migration
- Digital Transformation & DevOps
- User Experience & App Performance
また、どのようにしてDevOpsを始めればいいのかというと、以下の3つが述べられました。
最後に、「市場では”スピード”こそが勝利の鍵」という言葉でセッションが締められました。
それは「Appのスピード」であり、「開発のスピード」でもあります。そのスピード感を維持するために、DevOpsは今後も欠かせない要素となっていくでしょう。
From respected by DBAs to loved by Application Developers
Keynote を最後を飾ったのは Microsoft の Craig 氏で、彼は同社のクラウドチーム(Citus Data)に所属しています。また、前職で Heroku の PostgreSQL を担当し、コミュニティにも積極的に参加している PostgreSQL のエキスパートです。
※ ちなみにイベント主催の Percona社はMySQLのエキスパートのイメージが強いですが、近年PostgreSQLも対応するようになり、Percona Liveでもセッションが増えています
PostgreSQLに長年携わってきたスピーカーだからこそ分かる、同データベースの良い点・悪い点がたくさん述べられました。中には「The most important is … “How do you pronounce it ?”」(どう発音すればいいか分からない)というジョークも交え、オーディエンスの笑いを誘っていました。
PostgreSQLに足りない点として述べられたのは、主に以下の3つです。これらは逆にMySQLが得意とする点でもあり、よく両者の比較の焦点となっています。
- hard to install
- expert to configure
- HA/Replication
一方、優れた点として強調されていたのは、以下のスライドからも分かる通り「豊富な機能の数」です。このことが理由で、他のRDMSからの移行先としてPostgreSQLは最も多く選ばれているそうです。また、開発者のやりたいことを余すことなく実現できる、という点でApp開発者にも最も好感を持たれているという言葉もありました。
また、最後に今後の展望として、以下のような一覧が提示されました。今後もPostgreSQLでは不足する部分を補強しつつ、積極的な開発が続けられるとのことです。
Closing Remarks
この後も個々のセッションは残っていますが、2日目のKeynoteが全て終わったタイミングで一度「閉会の辞」が述べられました。次回のPercona Liveの予定(9/30~10/2 にアムステルダムで開催)も発表され、盛況のうちに終了となりました!