はじめに
2026年5月26日に、コミュニティ版 MySQL 8.4.7 と互換性のあるAmazon Aurora MySQL 8.4(以下、Aurora MySQL 8.4)がGA(一般公開)となりました。
Auroraクラスターを作成しようとした際には、エンジンバージョン一覧画面にて「Aurora MySQL 8.4.7」が選べるようになっています。

本記事では、Aurora MySQLの新しいバージョン管理方式や主な変更点に触れつつ、コミュニティ版MySQL 8.0と互換性のあるAurora MySQL 3からAurora MySQL 8.4へのアップグレード時に確認しておくべき変更点や、サポート終了(EOL)までのスケジュールについてご紹介します。
Aurora MySQL 8.4における変更点
今回のアップデートはAurora独自の機能拡張ではなく、純粋にMySQL 8.4ベースの更新が中心となっています。Auroraとしての新しい機能追加はありません。なお、Aurora MySQL バージョン 3.03.2 以降の通常の InnoDB テーブルで提供されていた「Fast insert」機能が利用できなくなっていますのでご注意ください。
新しいバージョン管理方式
これまでのAurora MySQLのバージョンは、以下のような管理方式となっていました。
- メジャーバージョン(1桁目): 基本的に
mysql-major-versionと連動
mysql-major-versionが、5.7 なら 2mysql-major-versionが、8.0 なら 3- マイナーバージョン(2桁目): 使用されているMySQLのバージョン(5.7.xや8.0.x)が変わる
- パッチバージョン(3桁目): 脆弱性の修正やバグ修正など
こちらについては弊社過去ブログでもご紹介していますので、詳細については以下の記事をご覧ください。
Amazon Aurora MySQL & Amazon RDS MySQLのサポート期間について(2025年8月版)
コミュニティ版MySQL 8.4と互換性のあるAurora MySQLのリリースに伴い、この管理方式が変更されました。変更内容はマニュアルより引用します。
Starting with Aurora MySQL version 8.4, the engine version format is simplified. The version number uses a
*major-version*scheme, where the major version (such as.*minor-version*8.4) represents MySQL compatibility and the minor version represents the feature and bug fix release. There is no separate patch level visible to customers, and the Aurora version number directly matches the MySQL compatibility version without a separate internal-to-external version mapping.
12 mysql-major-version.mysql_aurora.major-version.minor-versionFor example, the engine version for Aurora MySQL 8.4.7 is the following.
12 8.4.mysql_aurora.8.4.7
整理すると、以下のようになります。
- メジャーバージョン(例:
8.4)が MySQL との互換性を表す - マイナーバージョンが機能およびバグ修正リリースを表す
非常にシンプルで分かりやすい表記になりました。
MySQL 8.4由来の主な変更点とAuroraでの影響
認証プラグイン mysql_native_password のデフォルト無効化
Aurora MySQL 8.4では、オンプレミス版のMySQL 8.4同様に caching_sha2_password がデフォルトの認証プラグインとなります。なお、オンプレミス版とは異なり、MySQL 8.0で mysql_native_password プラグインを使用していた既存ユーザーは、アップグレード後も追加の対処なしでそのまま利用可能です。
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SHOW PLUGINS; +---------------------------------+----------+--------------------+-------------+-------------+ | Name | Status | Type | Library | License | +---------------------------------+----------+--------------------+-------------+-------------+ (省略) | mysql_native_password | ACTIVE | AUTHENTICATION | NULL | GPL | (省略) +---------------------------------+----------+--------------------+-------------+-------------+ |
新規ユーザーが mysql_native_password プラグインを使用することも可能です。その際には、ユーザー作成時にプラグインを明示的に指定する必要があります。
実行例)
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CREATE USER 'auth_native'@'%' IDENTIFIED WITH mysql_native_password BY '*********'; |
ちなみに、オンプレミス版のMySQL 8.4では mysql_native_password プラグインはデフォルトで無効化されているため、デフォルト設定のまま指定してユーザーを作成しようとするとエラーとなります。
詳細な動作につきましては、弊社ブログ「MySQL8.4での mysql_native_password 認証プラグインの扱い」にて解説していますので、必要に応じて併せてご参照ください。
レプリケーション関連 旧構文(MASTER/SLAVE)の完全削除
MySQL 8.4でレプリケーション関連の構文が「SOURCE」「REPLICA」に統一されたことに伴い、Aurora MySQL 8.4でも CHANGE MASTER TO などの旧構文は使用できなくなりました。これに合わせて、RDSイベントやパラメータグループ上の表記も新しい用語に置き換えられています。
Aurora 8.4クラスターで旧構文を試みたところ、以下のように構文エラーとなりました。一方で新構文は正しく認識されており、権限不足を示すエラーが返されます。
実行例)
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SELECT VERSION(), @@version_comment; +-----------+-------------------+ | VERSION() | @@version_comment | +-----------+-------------------+ | 8.4.7 | 5afaca9c | +-----------+-------------------+ 1 row in set (0.01 sec) /* 旧構文:エラーになります */ CHANGE MASTER TO MASTER_HOST='127.0.0.1'; ERROR 1064 (42000): You have an error in your SQL syntax; check the manual that corresponds to your MySQL server version for the right syntax to use near 'MASTER TO MASTER_HOST='127.0.0.1'' at line 1 /* 新構文:文法として認識されます */ CHANGE REPLICATION SOURCE TO SOURCE_HOST='127.0.0.1'; ERROR 1227 (42000): Access denied; you need (at least one of) the SUPER or REPLICATION_SLAVE_ADMIN privilege(s) for this operation |
Aurora MySQL 8.4でもMySQL 8.4本体と同様に、旧レプリケーション構文が完全に削除されていることが確認できました。
InnoDBシステム変数のデフォルト値変更
以下の表では、LTS移行時の主な変更・削除項目をまとめています。
| 変数名 | 8.0系デフォルト | 8.4系デフォルト | 影響・備考 |
|---|---|---|---|
| innodb_adaptive_hash_index | ON | OFF | 高速化パターン少なくOFFが標準化。性能差検証推奨。 |
| innodb_change_buffering | all | none | DML負荷・SSD環境で不要化。 |
| innodb_flush_method | fsync | O_DIRECT | OSキャッシュ回避でI/O効率改善。 |
| innodb_io_capacity | 200 | 10000 | 現行ストレージ性能に合わせ値を大幅増。 |
| innodb_log_buffer_size | 16MB | 64MB | 大トランザクション時の書込み効率向上。 |
Aurora 8.4でも、これらの値はMySQL 8.4の変更をそのまま継承しています。カスタムパラメータグループを利用して独自に値を上書きしている場合は、8.4系のデフォルト値を確認し、意図通りの設定になっているかを見直すことを推奨します。
弊社では、MySQL 8.0から8.4 LTSへの移行前に確認すべき互換性をまとめたホワイトペーパーをご用意しています。オンプレミス版をベースとした内容ですが、Auroraでも活用できる情報が多いため、アップグレードの検討・準備の際にはぜひ併せてご参照ください。
【ホワイトペーパー】MySQL 8.0→8.4LTS移行前互換性まとめ
Aurora MySQL 3 のEOL(サポート終了)とその移行
Aurora MySQL 8.4のリリースに伴い、Aurora MySQL 3の標準サポート終了日が2028年4月30日に決定しました。2029年7月31日まで引き続き利用可能ですが、2028年5月1日以降は延長サポート料金が発生します。そのため、Aurora MySQL 3を使用中の方は今のうちからアップグレード計画を立て、準備を進める必要があります。
参考:Release calendars for Amazon Aurora MySQL
Aurora MySQL 3.0.x → 8.4.x 移行時は、マニュアル に記載の手順に沿ってアップグレードを行います。メジャーバージョンのアップグレード方法は、これまでと変わらず大きく以下の2つが用意されています。
- インプレースアップグレード
- ブルー/グリーンデプロイを使ったアップグレード
まとめ
今回のAurora MySQL 8.4へのアップデートは、「MySQL 8.4化」が中心であり、Aurora独自の機能追加はありません。
しかし、移行にあたってはオンプレミス版MySQL 8.4で削除・変更された項目への対応が必須となります。
特に注意すべきは認証方式の変更(mysql_native_password)です。Aurora MySQL 8.4では既存ユーザーの継続利用が可能ですが、オンプレミス版MySQL LTSではデフォルト無効化や廃止の方向へ進んでいるため、将来的にAuroraでも廃止となる可能性が極めて高いです。事前にしっかりと確認しておきましょう。
パラメータの最適化も含め、挙動が変わる部分は多岐にわたります。Aurora 3系のEOLを前に、ぜひ余裕を持った早めの検証を推奨します。


