MySQL 8.0を運用している方にとって、2026年4月に迫るEOL(サポート終了)は見過ごせない問題です。サポートが終了すると、セキュリティパッチやバグ修正が提供されなくなり、システムの安全性や安定性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この記事では、MySQL 8.0 EOLの詳細な内容から、移行先の選び方、移行時の注意点まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説していきます。
この記事でわかること
- MySQL 8.0 EOLの正確な日程とサポート範囲
- EOL後に発生するリスクと影響
- MySQL 8.4 LTS、AWS RDS延長サポート、HeatWave MySQLなど移行先の比較
- 移行時の注意点とよくある失敗パターン
MySQL 8.0 EOLの概要
MySQL 8.0は、Oracleの標準的なLifetime Support Policyに基づき、2025年4月にPremier Supportが終了し、2026年4月にExtended Supportが終了します。
通常のOracle製品では、この後に無期限のSustaining Supportが提供されますが、MySQL 8.0についてはSustaining Supportが提供されないため、2026年4月以降は新しいセキュリティパッチやバグ修正が一切提供されなくなります。
ただし、HeatWave MySQLを利用している場合は例外で、Oracleは2027年4月までサポートを延長し、その期間中は重要なセキュリティパッチが提供されます。
MySQL 8.0がEOLに至った経緯
MySQLのバージョン管理は、定期的に新しいリリースへ移行していくポリシーに基づいて運営されています。これは特定のバージョンだけを永続的にサポートし続けるのではなく、技術の進歩に合わせて順次新しいバージョンへと移行していく仕組みです。
MySQL 8.0については、2025年4月にプレミアサポートが終了し、その後1年間の延長サポート期間を経て、2026年4月に完全なEOLを迎えます。この流れに伴い、AWS RDSやHeatWaveといったマネージドサービスも、それぞれのスケジュールで対応を発表しているところです。
公式終了日とサポート範囲
MySQL 8.0のサポート終了日は、利用している環境によって異なります。自社の環境に該当する日程を正確に把握しておくことが、移行計画を立てる上で欠かせません。
| 環境 | プレミア/標準サポート終了 | 延長サポート終了(EOL) | 備考 |
| Oracle MySQL 8.0本体 | 2025年4月 | 2026年4月 | プレミアサポート5年+延長サポート1年(例外的に短縮) |
| HeatWave MySQL 8.0 | – | 2026年4月 | コミュニティ版と同じスケジュール |
| AWS RDS for MySQL 8.0 | 2026年7月31日 | 2029年7月31日(有料) | コミュニティ版より約3ヶ月長い標準サポート、延長サポートは追加料金 |
| Aurora MySQL 3(8.0互換) | 2028年4月30日 | 2029年7月31日(有料) | コミュニティ版より約2年間長い標準サポート |
サポート範囲は標準と延長で大きく異なり、延長サポート期間中はセキュリティ修正が中心となります。AWS RDSの延長サポートは有料オプションとなっており、追加料金が発生する点にも注意が必要です。
MySQL 8.0 EOLが与えるリスクと影響
EOLを迎えた環境をそのまま使い続けると、セキュリティ更新が提供されず、脆弱性が放置されるリスクがあります。結果として、情報漏えいやシステム停止など重大な影響につながる可能性もあります。ここでは、EOL後に起こり得る具体的なリスクを整理します。
セキュリティ脆弱性に対応できなくなる
EOL後にもっとも深刻な問題となるのが、セキュリティ面でのリスクです。新たに発見された脆弱性に対するパッチが提供されなくなるため、攻撃者に狙われやすい状態が続くことになります。
データベースは企業の重要な情報を格納している場所です。HeatWave MySQLでは2026年4月以降、アップデートが完全に止まるため、DBシステムの安全性を自力で確保しなければならなくなります。これは技術的にも運用的にも大きな負担となるでしょう。
バグ修正が停止しシステムが不安定になる
セキュリティ以外にも、バグ修正や機能アップデートが終了することで、システムの信頼性が徐々に低下していきます。予期せぬ不具合が蓄積していき、ある日突然システムが動かなくなるといった事態も起こり得ます。
マイナーバージョンごとのサポート期間も短く設定されているため、定期的なアップグレードを怠ると、問題が雪だるま式に膨らんでいく可能性があります。日々の運用に追われていると見落としがちですが、長期的な視点での対策が求められます。
コンプライアンス要件への影響がでる
サポートが終了したソフトウェアを使い続けることは、コンプライアンスの観点からも問題となります。PCI DSSなどのセキュリティ基準や各種法規制では、サポート対象のソフトウェアを使用することが求められるケースが多いためです。
監査の際に指摘を受ける可能性があり、最悪の場合は事業継続に影響が出ることも考えられます。HeatWaveではコンプライアンス確保のため、8.4 LTSへの移行が推奨されています。
MySQL 8.0 EOLに向けた移行先の選択肢
EOLに備えて移行を検討する際、どの環境を選ぶかは重要な意思決定となります。選択肢は複数あり、それぞれにコストや運用負荷の違いがあります。ここでは主な移行先と特徴を整理します。
MySQL 8.4 LTSへの移行
もっともスタンダードな選択肢が、Oracleが提供する長期サポート版のMySQL 8.4 LTSへの移行です。プレミアサポートは2029年4月まで、延長サポートを含めると2032年4月まで安定した運用が見込めます。
長期間にわたって公式サポートを受けられる点が最大のメリットで、HeatWave MySQLではパフォーマンス向上とセキュリティ強化も期待できます。オンプレミス環境でMySQLを運用している企業にとっては、もっとも自然な移行先といえるでしょう。
AWS RDS延長サポートを活用する
AWS RDS for MySQL 8.0を利用している場合は、延長サポートという選択肢があります。標準サポート終了後も2029年7月31日まで有料でサポートを受けられるため、移行準備に時間をかけたい場合に有効です。
ただし、延長サポートは追加料金が発生し、3年目には料金が2倍になる可能性も指摘されています。あくまで移行までの猶予期間と捉え、早めにMySQL 8.4への移行を計画することをおすすめします。
HeatWave MySQLへの移行
Oracle Cloud上でMySQLを運用したい場合は、HeatWave MySQLへの移行も選択肢に入ります。8.4 LTSへのバージョンアップが推奨されており、既存の8.0インスタンスはメンテナンスで自動対応される予定でした。2027年4月までの1年間の延長により計画的な移行が可能になりました。ただし、延長期間中は新規インスタンス作成やシェイプ変更などの制約があります。
HeatWave MySQLでは、セキュリティと管理のしやすさが向上しており、分析ワークロードの高速化といった付加価値も得られます。クラウドへの移行を検討している企業には魅力的な選択肢となるでしょう。
移行先を比較して判断する
移行先の選定は、現在の環境がオンプレミスかクラウドか、予算やリソースがどの程度あるかによって変わってきます。8.4 LTSは長期安定を重視する場合に適しており、RDS延長サポートは最小限の変更で対応したい場合に向いています。
自社の状況を整理した上で、以下の比較ポイントを参考に判断することをおすすめします。
移行先別の比較ポイント
移行先を決める際には、複数の観点から比較検討することが大切です。ここでは、主要な4つの観点から各選択肢を比較していきます。
バージョンライフサイクル
移行先を選ぶ際にもっとも基本的な判断材料となるのが、バージョンのライフサイクルです。どの程度の期間サポートが継続されるかによって、次回の移行までの猶予が決まります。
MySQL 8.4 LTSはプレミアサポートが2029年4月まで、延長サポートを含めると2032年4月までサポートが予定されています。プレミアサポート期間中は新機能やバグ修正が継続的に提供され、延長サポート期間はセキュリティパッチが中心となります。一方、AWS RDS延長サポートは2029年7月まで、Aurora MySQL 3は2028年4月までとなっており、比較的短い期間で再度の対応が必要になる可能性があります。
運用・保守の責任範囲
運用・保守の責任範囲は、オンプレミスとマネージドサービスで大きく異なります。MySQL 8.4 LTSをオンプレミスで運用する場合は、セキュリティパッチの適用やバグ修正への対応を自社で行う必要があります。
AWS RDSやAurora MySQLなどのマネージドサービスでは、インフラ管理の多くをAWSに任せられるため、運用負荷を軽減できます。ただし、延長サポート期間中はセキュリティ修正が中心となり、新機能の追加は期待できない点には留意が必要です。
コストと将来拡張性
コスト面では、初期投資と運用コストの両面から検討する必要があります。MySQL 8.4 LTSは標準サポート期間が長いため、長期的に見ると追加コストを抑えやすい特徴があります。
AWS RDSの延長サポートは追加料金が発生し、3年目以降は料金が2倍になる可能性も示唆されています。将来の拡張性を考えると、早めに8.4 LTSへ移行する方がトータルコストを抑えられる場合が多いでしょう。
ベンダーロックインの考え方
移行先の選択は、特定のベンダーへの依存度にも影響します。MySQL 8.4 LTSやHeatWave MySQLを選択した場合はOracle依存が強まり、AWS RDSやAuroraを選択した場合はAWSへのロックインが進みます。
ただし、MySQL自体はオープンソースのデータベースであるため、完全なロックインにはなりにくい面もあります。将来的なクラウド間の移行可能性なども考慮しながら、自社の戦略に合った選択をすることが大切です。
| 項目 | MySQL 8.4 LTS | AWS RDS延長サポート | Aurora MySQL 3 |
| EOL予定 | 2032年4月 | 2029年7月31日 | 2028年4月30日 |
| 追加コスト | なし | あり(3年目2倍の可能性) | なし |
| 運用負荷 | 自社管理 | AWS管理 | AWS管理 |
| ロックイン | Oracle依存 | AWS依存 | AWS依存 |
MySQL 8.0 EOLに備えて移行する際の注意点
移行先が決まったら、実際の移行作業に入ります。スムーズに移行を完了させるために、事前に確認しておくべきポイントを解説します。
認証方式の変更への対応
MySQL 8.x系では、デフォルトの認証プラグインがcaching_sha2_passwordに変更されています。これまでMySQL_native_passwordを使用していた環境では、アプリケーション側の対応が必要になる場合があります。
接続ライブラリやドライバの互換性を事前に確認しておくことが重要です。古いクライアントツールを使用している場合は、ツールのアップデートも検討してください。
非互換機能・廃止機能を事前に確認する
メジャーアップグレード(8.0から8.4への移行など)では、非互換となる機能や廃止される機能が存在します。AWS RDSでは事前チェックツールが提供されているため、これを活用して互換性を確認することをおすすめします。
マイナーバージョンでも約1年程度でサポートが終了するため、定期的なアップデートを運用ルールに組み込んでおくことが望ましいでしょう。移行後も継続的なバージョン管理が求められます。
バックアップと検証環境を準備する
移行作業を開始する前に、必ずフルバックアップを取得してください。万が一移行に失敗した場合でも、元の状態に戻せる状態を確保しておくことが大切です。
また、本番環境と同等のテスト環境を用意し、事前に移行リハーサルを実施することを強くおすすめします。アプリケーションの動作確認やパフォーマンステストを本番移行前に完了させておきましょう。
移行スケジュールを立てる
EOL日程から逆算して、余裕を持ったスケジュールを立てることが成功の鍵です。Oracle MySQLの場合は2026年4月、AWS RDSの場合は2026年7月が目安となります。
検証期間や予備日を含めると、少なくとも6ヶ月前には移行プロジェクトを開始することが望ましいでしょう。HeatWaveについてはサポート延長により猶予が生まれていますが、早めの対応に越したことはありません。
MySQL 8.0 EOL対応でよくある失敗
多くの企業がEOL対応において、準備不足や判断の遅れといった共通の失敗を経験しています。対応を後回しにすると、コスト増加やシステム停止などのリスクが高まります。先行事例から学び、計画的に移行を進めることが重要です。
「まだ大丈夫」と先送りする
もっとも多い失敗パターンが、対応の先送りです。「まだ時間がある」と思っているうちに期限が迫り、慌てて対応することになると、十分な検証ができないまま本番移行を行わざるを得なくなります。
EOL直前になると、多くの企業が一斉に移行を開始するため、外部の支援リソースも逼迫しがちです。自社内の人員も他の案件と重なりやすく、計画通りに進められないケースが多発します。
延長サポートに依存しすぎる
AWS RDSの延長サポートを利用すれば時間を稼げますが、これに依存しすぎると後で困ることになります。延長サポート期間中は料金が発生し続け、3年目には2倍になる可能性もあります。
結局のところ、最終的なバージョンアップは避けられないため、延長サポートはあくまで移行準備のための猶予期間と捉えるべきです。コストを払い続けながら古いバージョンを使い続けるのは、長期的には得策ではありません。
検証不足のまま本番移行する
時間がないからといって、検証を省略して本番移行を行うのは非常に危険です。非互換機能の見落としや設定の誤りによって、移行後にダウンタイムが発生するケースがあります。
事前チェックツールの活用とテスト環境での十分な検証は、移行成功のための必須プロセスです。本番移行後に問題が発覚すると、原因調査と修正に多大な時間を要することになります。
- 計画段階で十分な検証期間を確保する
- テスト環境で移行リハーサルを複数回実施する
- ロールバック手順も含めて準備しておく
- 移行後の監視体制を整えておく
パソナデータ&デザインのMySQL運用支援サービスのご案内
MySQL 8.0 EOLへの対応を自社だけで進めるのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。そんなときは、専門家の支援を活用することも選択肢の一つです。
サービスの概要
パソナデータ&デザインでは、MySQLの運用支援サービスを提供しています。EOL対応の計画策定から実際の移行作業まで、経験豊富なエンジニアがトータルでサポートいたします。
現状のシステム分析、移行先の選定アドバイス、移行手順の策定、検証支援、本番移行の実施まで、必要な範囲でご支援が可能です。自社のリソースが限られている場合でも、計画的にEOL対応を進められます。
支援の流れ
まずは現状のMySQL環境についてヒアリングを行い、課題と要件を整理します。その上で最適な移行先と移行方法をご提案し、お客様と一緒に計画を策定していきます。
検証フェーズでは、テスト環境での移行リハーサルを支援し、問題点の洗い出しと解決を行います。本番移行時には、万全の体制でスムーズな切り替えをサポートいたします。
MySQL 8.0 EOLへの対応でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
パソナデータ&デザインのMySQL運用支援サービスの詳細はこちら
まとめ
MySQL 8.0は2026年4月にEOLを迎え、セキュリティパッチやバグ修正の提供が終了します。移行先としてはMySQL 8.4 LTS、AWS RDS延長サポート、HeatWave MySQLなどがあり、自社の環境やコスト、運用体制に応じて選択する必要があります。移行作業では、認証方式の変更や非互換機能の確認、十分な検証期間の確保が成功のポイントとなります。
この記事のまとめ
✓MySQL 8.0のEOLは2026年4月(Oracle)、AWS RDSは2026年7月に標準サポート終了
✓EOL後はセキュリティリスクやコンプライアンス問題が発生する
✓長期安定運用を目指すならMySQL 8.4 LTSへの移行を推奨
✓少なくとも6ヶ月前には移行プロジェクトを開始し、十分な検証期間を確保する
EOL対応は先送りにするほど選択肢が狭まり、リスクも高まります。まずは自社のMySQL環境を棚卸しし、移行計画の検討を始めてみてはいかがでしょうか。


