OCI構築の手順と課題を徹底解説|導入前に押さえるポイント

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の構築を検討する際、具体的な手順や注意点がわからず不安を感じていませんか。クラウド環境の構築は、ネットワーク設計からセキュリティ設定まで多岐にわたる作業が必要です。本記事では、OCI構築の全体フローから主要リソースの作成手順、導入時によくある課題とその解決策まで体系的に解説していきます。これからOCI環境を構築する方が、スムーズかつ安全に導入できるよう実践的な情報をお届けします。

目次

OCI構築の基本概念と事前準備

OCI構築を始める前に、基本的な概念と必要な準備を理解しておくことが重要です。適切な事前準備により、スムーズな構築作業が可能になります。

Oracle Cloud Infrastructureの概要と特徴

Oracle Cloud Infrastructureは、オラクル社が提供するエンタープライズグレードのクラウドサービスです。高性能なコンピューティング環境と充実したデータベース機能が特徴です。

OCIの主な強みのひとつは、特に Oracle Database ワークロードにおいて、価格性能比に優位性があると評価されている点です。特にデータベースワークロードにおいては、Oracle Database技術との親和性が高く、オンプレミスからの移行がスムーズに行えます。

さらにOCIの各リージョンは1つ以上の可用性ドメイン(AD)で構成されています。初期の4つのリージョン(London, Ashburn, Phoenix, Frankfurt)は3つのADを持ちますが、新しいリージョンは通常1つのADで構成されています。単一ADのリージョンでも、各AD内に3つのフォールトドメインがあり、高い可用性を確保できます。

フォールトドメインという独自の概念により、物理的な障害に対する耐性も強化されています。

リージョンと可用性ドメインの選定

OCIでシステムを構築する際、最初に検討するのがリージョンと可用性ドメインの選定です。ユーザーへの近接性やデータ主権の要件を考慮して、最適な物理ロケーションを決定することが重要です。

この選定における主なポイントは、ユーザーとの物理的な距離がシステム全体の応答速度に直結する点です。最適なリージョンを選ぶことで遅延を最小限に抑え、さらに複数の可用性ドメインにシステムを分散させることで、高い可用性を確保できます。

アカウント作成と初期設定の手順

OCIを利用するには、まずOracleアカウントの作成が必要です。公式サイトから無料トライアルに申し込むことで、30日間の無料利用枠300ドル相当のクレジットが提供されます。

アカウント作成後、最初に行うべきは管理者ユーザーの設定です。ルートアカウントは日常的な作業には使用せず、管理用の専用ユーザーを作成することをおすすめします。この段階で多要素認証を有効化しておくと、セキュリティレベルが向上します。

初期設定では、利用するリージョンの選択も重要なポイントです。日本国内からのアクセスを前提とする場合、東京リージョンまたは大阪リージョンを選択することで、低レイテンシーな環境を構築できます。

出典:Oracle Cloud Free Tier

テナンシとコンパートメント設計

OCIでは、リソースを論理的に管理するためにコンパートメントという概念を使用します。テナンシがOCIアカウント全体を表すのに対し、コンパートメントは部門やプロジェクトごとにリソースをグループ化する単位を表します。

適切なコンパートメント設計により、リソースの管理とアクセス制御が容易になります。例えば、開発環境・検証環境・本番環境それぞれに専用のコンパートメントを作成することで、環境間の分離と管理の効率化が図れます。

コンパートメントは階層構造で設計できるため、組織の構造に合わせた柔軟な管理が可能です。階層が深くなりすぎると管理が複雑になる可能性があるため、組織のニーズに応じて適切な深さに設計することが重要です。Oracleは最大6階層までサポートしていますが、多くの顧客はこの制限で問題を経験していません。

IAMポリシーとアクセス権限管理

OCIのセキュリティの要となるのが、Identity and Access Management(IAM)による権限管理です。IAMポリシーを適切に設定することで、最小権限の原則に基づいたアクセス制御を実現できます。

ポリシーは「誰が」「どのリソースに対して」「どのような操作を」行えるかを定義するものです。例えば、開発チームには開発環境のコンパートメント内でのみリソース作成権限を付与し、本番環境へのアクセスは管理者のみに制限するといった設定が可能です。

グループベースの権限管理を採用することで、個別ユーザーごとの設定が不要になり、管理工数を削減できます。新しいメンバーが加わった際も、適切なグループに追加するだけで必要な権限が付与される仕組みです。

ネットワーク基盤の構築手順

OCI構築において、ネットワーク設計は最も重要な要素の一つです。適切なネットワーク構成により、セキュアで拡張性の高いインフラを実現できます。

Virtual Cloud Network(VCN)の設計と作成

VCNはOCIにおける仮想ネットワークの基盤であり、プライベートなIPアドレス空間を提供します。VCNの設計は、システム全体のネットワークトポロジーを決定する重要な作業です。

VCN作成時には、CIDRブロックの選択が必要です。将来的な拡張を考慮し、十分な大きさのアドレス空間を確保することをおすすめします。例えば、10.0.0.0/16というCIDRブロックであれば、約65,000のIPアドレスが利用可能です。

OCIコンソールから「ネットワーキング」メニューを選択し、「仮想クラウド・ネットワーク」を作成します。ウィザードを使用すれば、基本的なネットワーク構成が自動的に設定されるため、初心者でも比較的容易に構築できます。

出典:Oracle Cloud Infrastructure チュートリアル

サブネットの配置とセグメント分離

VCN内には、用途に応じて複数のサブネットを作成します。パブリックサブネットとプライベートサブネットを適切に分離することで、セキュリティレベルの向上が期待できます。

パブリックサブネットは、インターネットからアクセス可能なリソースを配置する場所です。Webサーバーやロードバランサーなど、外部公開が必要なコンポーネントを設置します。一方、プライベートサブネットには、データベースサーバーやアプリケーションサーバーなど、内部からのみアクセスするリソースを配置します。

可用性を高めるためには、リージョン全体にまたがるリージョナルサブネットを使用し、複数の可用性ドメインにインスタンスを分散配置することが重要です。こうすることで、一つの可用性ドメインに障害が発生しても、サービスの継続性を保ちやすくなります。

ゲートウェイ設定とルーティング構成

ネットワーク通信を制御するために、適切なゲートウェイの設定が必要です。OCIでは、インターネットとの接続にインターネットゲートウェイ、プライベートサブネットからの外向き通信にNATゲートウェイ、Oracleサービスへのプライベート接続にサービスゲートウェイといったゲートウェイを使い分けます。

インターネットゲートウェイは、VCN内のリソースとインターネット間の双方向通信を可能にします。パブリックサブネット内のリソースがインターネットと通信する際に使用されます。

NATゲートウェイは、プライベートサブネット内のリソースからインターネットへの片方向通信を提供します。これにより、内部リソースがソフトウェア更新などでインターネットアクセスが必要な場合も、外部からの直接アクセスは遮断できます。

サービスゲートウェイは、VCNとOracleの他のクラウドサービス間でプライベートに通信するために使用します。

セキュリティリストとファイアウォール設定

ネットワークセキュリティの要となるのが、セキュリティリストの設定です。セキュリティリストは、サブネットレベルでのファイアウォールルールを定義するもので、インバウンドとアウトバウンドのトラフィックを制御します。

基本的なセキュリティリストでは、管理用やアプリケーションで必要となる最小限のポートのみを開放します。例えば、Webサーバーであれば、ポート80(HTTP)とポート443(HTTPS)のみを許可し、その他のポートは閉じておくことが推奨されます。

より細かい制御が必要な場合は、ネットワークセキュリティグループを使用します。これはインスタンスレベルでのセキュリティ制御を可能にし、セキュリティリストと組み合わせることで多層的な防御を実現できます。定期的にルールを見直し、不要な許可設定がないか確認することも重要です。

データベースサービスの導入と設定

OCIは強力なデータベースサービスを提供しており、エンタープライズグレードのデータ管理基盤を構築できます。用途に応じた適切なサービス選択が成功の鍵です。

Autonomous Databaseの構築手順

Autonomous Databaseは、OCIが提供する自動管理型のデータベースサービスです。自動チューニングやパッチ適用が行われるため、運用負荷を大幅に削減できます。

構築を開始するには、OCIコンソールから「Autonomous Database」メニューを選択します。データベースのタイプとして、トランザクション処理向けのATPまたは分析処理向けのADWを選択できます。

ワークロードに応じてECPU数とストレージ容量を指定します。※Autonomous DatabaseではOCPUが廃止されており、現在はECPUのみがサポートされています。

ネットワークアクセスの設定では、パブリックエンドポイントを利用するか、VCN内のプライベートエンドポイントのみからアクセスさせるかなど、アクセス方式を選択します。セキュリティを重視する場合は、プライベートエンドポイントの使用が推奨されます。

Base Database Serviceの設定

Base Database Serviceは、より細かい設定が可能な従来型のデータベースサービスです。既存のOracle Databaseからの移行や、カスタマイズが必要な場合に適しています。

データベースシステムの作成時には、シェイプ(インスタンスタイプ)とストレージサイズを選択します。高可用性が必要な場合は、RAC構成を選択することで、複数ノードでのクラスタリングが可能です。

バックアップポリシーの設定も重要です。自動バックアップの頻度や保持期間を適切に設定することで、データ損失のリスクを最小化できます。初期設定では毎日バックアップが推奨されていますが、ビジネス要件に応じて調整が可能です。

バックアップとリカバリ機能

OCIのデータベースサービスには、包括的なバックアップ機能が組み込まれています。自動バックアップにより、定期的なデータ保護が実現されます。

バックアップは、OCIのオブジェクトストレージに保存されるため、高い耐久性と可用性が保証されます。リカバリが必要な場合は、特定の時点への復元やクローン作成が可能です。

長期保存が必要なバックアップについては、アーカイブストレージへの移動も検討できます。これによりストレージコストを削減しながら、コンプライアンス要件を満たすことができます。定期的にリカバリテストを実施し、バックアップからの復元手順を確認しておくことも重要です。

パフォーマンス監視とチューニング

データベースのパフォーマンスを最適な状態に保つには、継続的な監視とチューニングが欠かせません。OCIは包括的な監視機能を提供しており、リアルタイムでパフォーマンス指標を確認できます。

Performance Hubを使用すると、SQL実行時間やリソース使用状況などの詳細な情報が可視化されます。ボトルネックとなっているクエリを特定し、インデックスの追加やSQL文の最適化を行うことで、パフォーマンス向上が期待できます。

Autonomous Databaseでは、自動チューニング機能により多くの最適化が自動的に実行されます。ただし、アプリケーション固有の要件については、手動での調整が必要になる場合もあります。メトリクスを定期的に確認し、パフォーマンス傾向を把握することが大切です。

セキュリティとコンプライアンス対策

クラウド環境のセキュリティは、企業の信頼性に直結する重要な要素です。OCIが提供する多層的なセキュリティ機能を適切に活用することが求められます。

ネットワークセキュリティの強化

ネットワークレベルでのセキュリティ対策は、不正アクセスを防ぐ第一の防御線となります。多層防御アプローチにより、包括的なセキュリティを実現できます。

まずは前述のセキュリティリストとネットワークセキュリティグループを適切に設定し、不要なトラフィックを遮断します。さらに、Web Application Firewallを導入することで、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの攻撃から保護できます。

DDoS攻撃への対策として、OCIが提供するDDoS Protectionサービスを有効化することも推奨されます。これにより、大規模なトラフィック攻撃からシステムを守ることができます。定期的にセキュリティ設定を見直し、脆弱性がないか確認する習慣をつけましょう。

暗号化設定とキー管理

データの機密性を保護するには、適切な暗号化設定が不可欠です。OCIでは、保存時の暗号化と転送時の暗号化の両方をサポートしています。

ブロックボリュームやオブジェクトストレージは、デフォルトで暗号化されます。さらに高度なセキュリティが必要な場合は、Key Management Service(KMS)を使用して、独自の暗号化キーを管理できます。

キーのローテーションを定期的に実施することで、セキュリティレベルを維持できます。KMSでは、キーの使用状況を監査ログで追跡できるため、コンプライアンス要件への対応も容易です。また、Hardware Security Module(HSM)を使用することで、最高レベルの鍵管理を実現できます。

監査ログと証跡管理

セキュリティインシデントの検知や調査のため、監査ログの適切な管理が重要です。OCIのAudit Serviceにより、すべてのAPI呼び出しと管理操作が自動的に記録されます。

監査ログは、誰がいつどのような操作を行ったかを詳細に記録します。これにより、不正アクセスや設定変更の追跡が可能になります。ログは長期保存が推奨されており、コンプライアンス要件に応じて保持期間を設定できます。

ログ分析ツールと連携することで、異常な動作パターンを自動検知できます。例えば、通常とは異なる時間帯でのログインや、大量のデータダウンロードなどを検知し、アラートを発生させることが可能です。定期的にログをレビューし、セキュリティ態勢を確認することが大切です。

脆弱性対策とセキュリティ監視

継続的なセキュリティ監視により、脅威を早期に発見し対処できます。OCIのCloud Guardサービスは、セキュリティ態勢を自動的に監視し、問題を検出します。

Cloud Guardは、設定ミスや異常なアクティビティを検出すると、自動的にアラートを発生させます。さらに、事前定義されたレスポンダーにより、一部の問題は自動的に修正されます。例えば、パブリックアクセスが誤って許可されたバケットを自動的にプライベートに変更するといった対応が可能です。

脆弱性スキャンサービスを使用することで、コンピュートインスタンスの脆弱性を定期的にスキャンできます。検出された脆弱性については、優先度に応じてパッチ適用やアップデートを計画的に実施します。セキュリティベストプラクティスに従った運用により、リスクを最小限に抑えられます。

運用管理とモニタリング体制

安定したシステム運用には、適切な監視体制とメンテナンス計画が不可欠です。OCIの運用管理機能を活用し、効率的な運用を実現しましょう。

監視アラートとメトリクス設定

システムの健全性を維持するため、重要な指標を継続的に監視する必要があります。OCIのMonitoring Serviceでは、各種リソースのメトリクスをリアルタイムで収集・可視化できます。

CPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/O、ネットワークトラフィックなどの指標に加え、アプリケーション固有のカスタムメトリクスも Monitoring に送信して監視できます。これらの指標をダッシュボードで一元管理することで、システム全体の状況を把握できます。

アラーム機能を設定することで、閾値を超えた場合に自動的に通知を受け取れます。例えば、CPU使用率が80%を超えた場合や、ディスク容量が残り10%になった場合などに、メールやSlackへの通知が可能です。適切な閾値設定により、問題が深刻化する前に対処できます。

ログ管理と障害対応

システムログを適切に収集・分析することで、障害の早期発見と迅速な対応が可能になります。OCIのLogging Serviceにより、各種ログを一元的に管理できます。

アプリケーションログ、システムログ、監査ログなど、さまざまなログをLogging Serviceに集約します。ログの検索やフィルタリング機能により、必要な情報を素早く見つけることができます。

障害発生時には、ログを分析して根本原因を特定します。エラーメッセージやスタックトレースから問題箇所を特定し、適切な対応を行います。インシデント管理プロセスを確立し、障害対応の手順を文書化しておくことで、スムーズな復旧が可能です。過去の障害事例をナレッジとして蓄積し、再発防止に活用しましょう。

パッチ管理とメンテナンス計画

セキュリティと安定性を保つため、定期的なパッチ適用とメンテナンスが必要です。OCIでは計画的なメンテナンスにより、システムへの影響を最小限に抑えられます。

Autonomous Databaseでは、パッチ適用が自動的に行われるため、管理者の作業負荷が軽減されます。一方、コンピュートインスタンスやBase Database Serviceでは、手動でのパッチ適用が必要です。

メンテナンスウィンドウを設定し、業務への影響が少ない時間帯にパッチ適用を実施します。事前にテスト環境でパッチの動作を確認し、問題がないことを確認してから本番環境に適用することが推奨されます。定期的なメンテナンス計画を立て、チーム内で共有しておくことで、計画的な運用が実現できます。

災害復旧とBCP対策

ビジネス継続性を確保するため、災害復旧計画の策定が重要です。OCIではリージョン間レプリケーションなどの機能により、高度なBCP対策を実現できます。

データベースのバックアップを別リージョンに複製することで、リージョン全体の障害にも対応できます。災害復旧サイトを別リージョンに構築し、定期的に切り替えテストを実施することで、実際の災害時にも迅速に対応できる体制を整えます。

目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO)を定義し、それに応じた復旧戦略を策定します。クリティカルなシステムについては、アクティブ-アクティブ構成により、常時稼働を実現することも検討しましょう。定期的にBCP計画を見直し、ビジネス要件の変化に対応することが大切です。

コスト最適化と予算管理

クラウド利用では、適切なコスト管理が経営上の重要課題となります。OCIの各種機能を活用し、費用対効果の高い運用を目指しましょう。

リソース使用量とコスト分析

コスト最適化の第一歩は、現状のリソース使用状況を正確に把握することです。OCIのCost Analysis機能により、詳細なコスト内訳を確認できます。

コンパートメントやタグごとにコストを分析することで、どの部門やプロジェクトでコストが発生しているかを明確にできます。使用率の低いリソースや過剰にプロビジョニングされたインスタンスを特定し、適切なサイズへの変更を検討します。

コストレポートを定期的にレビューし、予想外のコスト増加がないか確認します。異常なコスト増加が検出された場合は、原因を調査し、必要に応じて対策を講じます。リソースの使用パターンを分析し、最適なリソース配分を実現することで、コスト効率を向上させられます。

予算設定とアラート機能

予期しないコスト超過を防ぐため、予算管理機能の活用が有効です。OCIのBudget機能により、コンパートメントやタグごとに予算を設定できます。

月次または年次の予算を設定し、使用量が予算の一定割合に達した時点でアラートを発生させます。例えば、予算の80%に達した時点で警告を出し、100%に達した場合は緊急アラートを発生させるといった設定が可能です。

アラートを受け取った際は、コストの内訳を確認し、必要に応じてリソースの削減や最適化を実施します。予算管理を徹底することで、計画的なコスト管理が可能になり、予期しない出費を防げます。定期的に予算と実績を比較し、計画の妥当性を検証することも重要です。

Oracle Universal Credits活用

長期的な利用が確定しているリソースについては、Universal Credits などのコミットメント契約を活用することで大きなコスト削減が可能です。OCIでは、1~3年程度の期間でクラウド利用額をコミットすることで、従量課金(Pay-as-you-go)と比べて割引された単価で利用できます。

予測可能なワークロードや定常稼働するシステムに適しており、過剰コミットや不足がないよう、利用実績を見ながら段階的にコミット量を調整していく運用が推奨されます。

予約購入の際は、将来の需要を慎重に見積もることが重要です。過剰な予約は無駄なコストとなる一方、不足する場合はオンデマンド料金が追加でかかります。段階的に予約を増やし、利用パターンに合わせて最適化していくアプローチが推奨されます。定期的に予約状況を確認し、更新や追加購入を検討しましょう。

不要リソースの削除と最適化

定期的なリソースの棚卸しにより、不要なコストを削減できます。未使用リソースの特定と削除は、コスト最適化の重要な施策です。

停止したまま放置されているインスタンスや、アタッチされていないブロックボリューム、使用されていないロードバランサーなど、不要なリソースが蓄積されがちです。これらを定期的に洗い出し、不要なものは削除します。

スナップショットやバックアップについても、保持期間を見直し、古いものは削除することでストレージコストを削減できます。開発環境やテスト環境については、業務時間外は停止する運用ルールを設けることで、コンピュートコストを大幅に削減できます。また、リソースにタグを付けて管理し、所有者や用途を明確にすることで、不要リソースの特定が容易になります。

OCI構築における主要課題と解決策

OCI導入時には、さまざまな課題に直面する可能性があります。事前に把握し対策を講じることで、スムーズな導入を実現できます。

ネットワーク設計の複雑性対応

OCIのネットワーク設計は、多くの構成要素から成り立っており、初めての方には複雑に感じられることがあります。適切な設計手順を踏むことで、この課題を克服できます。

まずは全体のネットワークトポロジーを図示し、各コンポーネントの役割と接続関係を明確にします。VCN、サブネット、ゲートウェイ、ルートテーブル、セキュリティリストの関係性を理解することが重要です。

複雑な設計が必要な場合は、段階的なアプローチを採用します。最初はシンプルな構成から始め、要件に応じて徐々に拡張していく方法が有効です。Oracleが提供する公式ドキュメントやチュートリアルを活用し、ベストプラクティスに沿った設計を心がけましょう。不明点があれば、Oracleのサポートやコミュニティフォーラムを活用することで、解決策を見つけられます。

既存システムとの連携課題

オンプレミス環境や他のクラウドサービスとOCIを連携させる際、接続性やデータ同期の課題が発生する場合があります。ハイブリッド構成を適切に設計することが解決の鍵です。

FastConnectやVPN接続により、オンプレミス環境とOCIを安全に接続できます。専用線接続が必要な場合はFastConnectを、比較的小規模な接続にはVPNが適しています。ネットワークの帯域幅や遅延要件を考慮し、適切な接続方法を選択します。

データ移行については、段階的なアプローチが推奨されます。初期段階では一部のワークロードのみを移行し、動作確認を行った後、徐々に移行範囲を拡大します。Data Transfer Serviceなどのツールを活用することで、大量データの移行もスムーズに実施できます。移行計画を綿密に立て、リスクを最小化しましょう。

スキル不足と学習コスト

OCIの導入には、新しい技術スタックへの理解が必要となり、チームのスキルアップが課題となることがあります。計画的な教育プログラムにより、この課題に対処できます。

Oracleは豊富なトレーニングコンテンツとチュートリアルを提供しており、無料で利用できるものも多数あります。Oracle Cloud Infrastructure チュートリアルでは、段階的に学習を進められるコンテンツが用意されています。

チーム内でナレッジ共有の仕組みを構築し、学習した内容を文書化して共有することで、効率的なスキル習得が可能です。外部の専門家やコンサルタントのサポートを活用することで、初期段階の学習コストを削減できます。認定資格の取得を目標に設定することで、体系的な学習を促進できます。

出典:Oracle Cloud Infrastructure チュートリアル

移行計画とダウンタイム最小化

既存システムからOCIへの移行では、ダウンタイムの最小化が重要な課題です。綿密な移行計画により、ビジネスへの影響を最小限に抑えられます。

まずは移行対象システムの棚卸しを行い、依存関係や優先順位を明確にします。クリティカルでないシステムから段階的に移行し、ノウハウを蓄積してから重要システムの移行に取り組むアプローチが有効です。

データベース移行では、レプリケーション技術を活用することで、ダウンタイムを最小化できます。本番環境を稼働させたまま、バックグラウンドでデータを同期し、最終的な切り替え時のみ短時間の停止で移行が完了します。十分なテストを実施し、ロールバック手順も事前に準備しておくことで、リスクを軽減できます。

導入成功のためのベストプラクティス

OCI導入を成功に導くために、実績のあるベストプラクティスを採用することが重要です。計画的なアプローチにより、確実な成果を上げられます。

段階的移行アプローチ

一度にすべてのシステムを移行するのではなく、段階的に進めることでリスクを軽減できます。フェーズ分けした移行計画により、着実に導入を進められます。

第一フェーズでは、影響範囲の小さい非クリティカルなシステムから移行を開始します。これにより、チームがOCI環境に慣れ、ノウハウを蓄積できます。問題が発生しても、ビジネスへの影響を最小限に抑えられます。

次のフェーズでは、第一フェーズで得られた知見を活かし、より重要なシステムの移行に取り組みます。各フェーズの完了後には、振り返りを実施し、改善点を次のフェーズに反映させます。段階的なアプローチにより、確実で安全な移行が実現できます。

チーム体制と役割分担

OCI構築プロジェクトでは、適切なチーム体制の構築が成功の鍵となります。明確な役割分担により、効率的なプロジェクト運営が可能です。

プロジェクトマネージャー、アーキテクト、インフラエンジニア、セキュリティ担当者など、各役割を明確に定義します。それぞれの責任範囲を明示し、意思決定プロセスを確立することで、スムーズな進行が実現します。

定期的なミーティングを開催し、進捗状況や課題を共有します。コミュニケーションツールを活用して、チーム内の情報共有を円滑にすることも重要です。外部パートナーやベンダーとも密に連携し、専門知識を活用することで、プロジェクトの成功確率が高まります。

テスト環境での検証手順

本番環境への適用前に、十分なテストを実施することが重要です。包括的なテスト計画により、問題の早期発見と対処が可能になります。

テスト環境は本番環境と同等の構成にし、実際の運用を想定したテストを実施します。機能テスト、性能テスト、セキュリティテスト、障害復旧テストなど、多角的な検証を行います。

負荷テストにより、想定される最大負荷でもシステムが正常に動作することを確認します。障害時の動作も検証し、フェイルオーバーやバックアップからの復旧が適切に機能することを確認します。テスト結果を文書化し、本番環境への適用判断の材料とします。

継続的改善とナレッジ蓄積

OCI環境の構築は、初期導入で完了するものではありません。継続的な改善活動により、システムの価値を最大化できます。

定期的にシステムのパフォーマンスやコストを見直し、最適化の機会を探します。新しいOCIサービスや機能がリリースされた際には、自社システムへの適用可能性を検討します。

プロジェクトを通じて得られた知見やノウハウを文書化し、組織の資産として蓄積します。構築手順書や運用マニュアルを整備し、属人化を防ぎます。定期的な振り返り会議を開催し、改善点を洗い出して次のアクションにつなげます。このサイクルを回すことで、組織全体のクラウド活用能力が向上します。

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まとめ

OCI構築には、適切な設計と計画的な実施が不可欠です。本記事では、基本概念から具体的な構築手順、課題への対処法までを解説しました。

  • VCNやコンパートメントなどOCIの基本要素を理解し、適切な設計を行う
  • ネットワーク、データベース、セキュリティの各要素を段階的に構築する
  • 監視体制とコスト管理を整備し、安定した運用を実現する
  • 導入時の課題を事前に把握し、ベストプラクティスに沿って対処する
  • 専門家のサポートを活用し、確実な導入を進める

OCI構築は複雑に感じられるかもしれませんが、本記事で紹介した手順に沿って進めることで、スムーズな導入が可能です。まずは小規模な環境から始め、徐々に知識と経験を積み重ねていきましょう。OCI導入の成否はその9割が初期設計で決まるため、パフォーマンスやコストを最適化するには専門家の知見が不可欠です。スマートスタイルでは、OCIの豊富な実績を持つ専門家がお客様のビジネス要件に最適な環境を設計し、導入から構築までをご支援します。

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