HeatWavejp Meetup #14
SQLだけで始めるAI活用、HeatWave Vector Storeと GenAIの可能性
2025年7月17日(木)にMySQL HeatWaveユーザーコミュニティ第14回イベントを開催いたしました!
HeatWavejp は、MySQL HeatWave の良さを多くの人に知ってもらうことを目指し、参加者同士でノウハウやナレッジを共有できるユーザーコミュニティです。本イベントは、参加者同士のつながりを深めることや、ユーザー同士の情報交換の場を目指し開催しています。
本レポートは、スマートスタイル データテクノロジー本部クラウドラボの朴が担当いたします。
オープニング&HeatWave 概要
登壇者:内藤 達也 氏(株式会社スマートスタイル)
オープニングセッションでは、毎回恒例の HeatWavejp Meetupの概要紹介が行われました。今回の担当は株式会社スマートスタイルの内藤 達也さんです。
HeatWave(旧MySQL HeatWave)は、MySQLベースのマネージドデータベースサービスであり、既存のMySQLユーザーにとって扱いやすい点、さらにOCI上だけでなくAWS(東京リージョン)でも利用可能である点が特徴です。
機能面では、以下のような構成が紹介されました。
• HeatWave MySQL:OLTPとOLAPの両方に対応した分析エンジン
• HeatWave AutoML:MySQL上で機械学習の処理が可能なAutoML機能
• HeatWave Lakehouse:オブジェクトストレージと連携した大規模データ分析機能
• HeatWave GenAI/Vector Store:生成AIやベクトル検索への対応機能
• HeatWave Autopilot:パフォーマンスチューニングや運用の自動化支援機能
MySQLをインターフェースとし、その裏側に上記の各機能が統合された構成であると説明されました。MySQL単体としての利用も可能でありながら、用途に応じてこれらの機能を組み合わせて活用できる柔軟性があるとのことです。
今回のセッションのテーマが「SQLから始めるAI活用」ということもあり、特にVector StoreやLLMとの連携など、生成AI関連機能に焦点を当てた内容に注目が集まりました。
私が思う現時点でのHeatWave GenAIの使い所
登壇者:山崎 由章 氏(HeatWavejp)
HeatWavejpの山﨑 由章さんからは、HeatWave GenAIを巡るよくある誤解を整理しながら、現在実際に活用できる機能やユースケースについての解説がありました。
2025年7月時点で、HeatWave GenAIが対応している主な用途は次の通りです。
• 専門知識がなくてもSQLベースでLLMを扱える構成(RAGやチャット形式など)
• データを外部に出さずに利用できる、セキュリティ面に配慮した設計
• MySQL内のテキストデータに対する意味ベースの検索(セマンティック検索)
一方で、自然言語でSQLの自動生成や、AutoMLと深く連携する機能は、今後の開発計画に含まれている段階とのことです。そのため、導入を検討する際には、現状の仕様や対応範囲をきちんと把握しておくことが大切だと強調されていました。
HeatWave GenAI で営業の提案ガイド生成を試してみた
登壇者:加藤 央彬 氏(株式会社LAC)
株式会社LACの加藤 央彬さんからは、「HeatWave GenAI で営業の提案ガイド生成を試してみた」というテーマで、社内検証内容を紹介してくれました。
今回の検証では、製品・顧客情報と、提案文書の作成ルールを元に、HeatWave GenAI v2.0を使って提案ガイドを自動生成できるかを試しています。
ポイントは、HeatWave GenAIが持つ以下のような特徴を活かしている点です。
• データベース内に組み込まれたLLMなので、外部に情報を出さずに生成できる
• テーブル形式の社内データをそのままベクトル化して検索に使える
• 自動チャンキングなど、前処理の工夫にも対応可能
初期の段階では、日本語の扱いやデータ構造の工夫が必要で、成功率は70%ほどでしたが、データにラベルを付け、関連情報をまとめて提示する形式に変更したところ、成功率は80%まで向上したとのことです。
また、文書検索の精度はかなり高く、ほぼ正確に目的の情報にたどり着けたという結果も出ています。少量のデータでも効果があったのは、実務に取り入れるうえで安心材料になりそうです。
今後の課題としては、日本語対応の精度向上や、チャンク処理の柔軟性、検索まわりの改善(セマンティック検索・ハイブリッド検索など)が挙げられていました。
EC-CUBEにベクトル検索を組み込んでみた

株式会社スマートスタイルの福本 誠さんからは、ECサイト構築システム「EC-CUBE」にベクトル検索を取り入れた検証事例の紹介がありました。
HeatWaveのベクトルストア機能を活用し、「商品情報 × 類似検索」という構成で以下の2つの機能をPoC的に実装しました。
- 商品一覧画面での「キーワード順」並び替え
- 商品詳細画面での「類似商品レコメンド」表示
今回の検証では、OCI環境上にEC-CUBE(ダウンロード版)とHeatWaveを構築。商品名や説明をベクトル化してMySQLに格納し、検索や推薦に活用しています。ORMの制約でVector型がうまく扱えず、バイナリ型へのキャストや既存コードの直接編集など、現場ならではの工夫もいろいろ登場しました。
少ないリソースでも工夫次第でここまで動く、というのが伝わる内容でした。
RAGにおけるHeatWaveの革新性-SQL型RAGの精度向上アプローチ-
登壇者:小川 航平 氏(日本オラクル株式会社)
日本オラクル株式会社の小川 航平さんからは「SQLベースのRAGがどこまで高精度を実現できるのか」というテーマのセッションです。
企業内には約6〜7割ものデータが活用されずに放置されている現状を踏まえ、そのようなデータを活用して生成AIエージェントの意思決定を支援する手段として、SQLベースのRAG構成とHeatWaveの技術が紹介されました。
HeatWaveは、OLTP・DWH・機械学習の処理を1つのMySQLベースデータベースに統合しており、SQLだけでベクトル検索やMLモデルの学習・推論が可能です。
これにより、PoCやチューニングの高速化が実現できる点が強調されました。
具体例としては、「離反リスクの高い顧客を売上順に抽出し、パーソナライズしたメールを生成・送信する」という一連の処理を、複数のサービスやステップを経ることなくSQLのみで実装できる構成が紹介されています。
これは、従来の複雑な連携を簡素化できるHeatWaveの強みです。
さらに、Azure AI SearchやAWS Kendraなどのマネージドサービスと比較し、検索精度設計の自由度やパフォーマンスの面で優位性がある点も説明されました。
Generative AI Agentサービスとの連携については、現在はCLIベースでの実験段階にあるとのことで、今後の進展が期待されます。
MySQL HeatWave 最新アップデート情報
当日は時間の都合により紹介できませんでしたが、HeatWaveおよびHeatWave on AWSに関する最新のアップデート情報も多数リリースされています。
- HeatWave 主要リリース情報
- MySQL version 9.3.0、 8.4.5、 および 8.0.42 サポート
- AutomaticBackupRetention デフォルト設定
‘DELETE’ → ‘RETAIN’ に変更 - Single-AD クラスタの最適化
- ネットワーク・セキュリティ・グループをサポート
- MySQL version 9.3.1 をサポート
- MySQL REST サービスをサポート
- 保存期間を超過したバックアップのソフト削除
- MySQL version 9.3.2 をサポート
- Heat Wave on AWS 主要リリース情報
- 2つのリージョンが利用可能になる
- Oracle Cloud Free Tier で高可用性 DBシステムをサポート
- MySQL version 8.0.42 をサポート
- MySQL version 9.2.1 、 9.2.2 をサポート
- MySQLリリースのサポート/非推奨スケジュールを公開
- 高可用性DB向けにPrivateLink が可能
- MySQL version 8.4.4 、 8.4.5 をサポート
- PrivateLink接続でのクライアント接続暗号化が無効化可能
-DBシステムあたりのストレージ容量の増加 - MySQL version 9.3.0 をサポート
- MySQL version 9.3.1 をサポート
- データベース内LLMのサポート拡張
- Hypergraph Optimizer をデフォルトで有効化
- 高可用性DBシステム向けEgress PrivateLinkをサポート
- MySQL version 9.3.2 をサポート
- CloudWatchモニタリングに対応
まとめ
今回も多くのコメントやフィードバックを通じて、参加者の皆さまの関心の高さが感じられたHeatWavejp Meetup #14。「SQLだけで始まるAI活用」というテーマのもと、Vector StoreやLLMとの連携といった新たな可能性に触れる機会となりました。
スライド資料や関連情報は、今後Speaker DeckやDocswellにて公開予定とのことです。見逃した方は、SlackやX(旧Twitter)での情報発信もぜひチェックしてみてください。
次回のHeatWavejp Meetup #15では、「HeatWave MySQL × 他製品連携~連携で広がる活用シナリオ~」をテーマに、MySQLインターフェースの強みを活かした実活用事例が紹介される予定です。詳細はSlackやConnpassにて案内されるとのことなので、引き続きのフォローをおすすめします。
今回もご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
次回のMeetupでまたお会いできるのを楽しみにしています。