ベンダや開発者がサポートを提供するソフトウェアは、一般的には永久期限でのサポートではなく、予め定められた期限があります。
MySQLについてもサポートベンダであるOracle社によるLifetime Support Policyとして、リリースからの一定期間において、何が提供され、何が提供されなくなるかという規約が定められています。
ここではMySQLのサポート期限や、各フェーズでのサポート内容、期限を超過した後の対応について説明します。
MySQLのサポート内容とは？
MySQLの新バージョン(5.x、8.x等)がリリースされてからの一定期間、セキュリティ更新や機能改善、技術サポート(有償)などの提供が行われます。
経過期間ごとにフェーズが定められており、各フェーズでは以下が提供されます。
Oracle Lifetime Support for MySQL
| サポート概要 | Premier(1-5年) | Extended(6-8年) | Sustain(9年以降) |
|---|---|---|---|
| 24時間365日サポート | • | • | • |
| 無制限インシデント | • | • | • |
| ナレッジベース | • | • | • |
| メンテナンス・リリース、バグ修正、パッチ、アップデートの提供 | • | • | 既存のもの |
| MySQL コンサルティング・サポート | • | • | • |
- MySQL Premier Support – 正式(GA)リリースより5年間※、MySQLメンテナンス・リリース、アップデート、バグ修正（エラー修正)およびセキュリティ情報を提供します。
- MySQL Extended Support – Premier Support期間エラー修正を含む、Premier Support期間終了後3年間、特定のMySQLリリースに対する追加サポートを提供します。MySQLメンテナンス・リリース、アップデート、バグ修正（エラー修正)およびセキュリティ情報を提供します。
- MySQL Sustaining Support – Premier Support 期間終了後の任意の期間、2010年11月１日以降のPremier Support対象のすべてのMySQLリリースについて提供します。サポート・エンジニアからのサポートを受けることができます。新規リリース、新規バグ修正（新規案件に対するエラー修正）、新規アップデートを含みません。既存のアップデート、修正、セキュリティ情報のみ提供します。
※ バージョンにより期間が変動する可能性があります
MySQL Premier Support と MySQL Extended Supportの違いは？
提供されるサポート内容に違いはありません。
また、現時点で提供される条件も無いため、ユーザが明示的に契約を行う必要もなく、無償で提供されます。
つまり、実用上は Premier Support(5年)+Extended Support(3年) \= 合計8年(リリースにより変動あり) の期間のサポート内容に変更はありません。
MySQL Sustaining Supportで可能なこと
Sustaining Support期間に入ったリリースは、サポート期間切れ、いわゆる End-Of-Lifetime Support(EOL) となり、以下の提供が行われなくなります。
- 新規バグの修正パッチのリリース
- セキュリティパッチのリリース
EOLとなったバージョンのソフトウェアや、すでにリリース済みのパッチをダウンロードすることはできます。
また、有償ライセンスを所持しているユーザは、EOL時点でのソフトウェアバージョンの内容に基づきOracle社からのサポートを受ける事は可能です。
MySQLサポート期限は？
MySQLの新バージョンのリリースごとに期間が定められています。
Oracle Lifetime Support Policy: Technology Products (“MySQL” で検索)
| Release version | GA Date | Premier Support Ends |
Extended Support Ends |
Sustaining Support Ends |
|---|---|---|---|---|
| MySQL Database 5.0 | 2005/10/1 | 2011/12/1 | Not Available | Indefinite |
| MySQL Database 5.1 | 2008/12/1 | 2013/12/1 | Not Available | Indefinite |
| MySQL Database 5.5 | 2010/12/1 | 2015/12/1 | 2018/12/1 | Indefinite |
| MySQL Database 5.6 | 2013/2/1 | 2018/2/1 | 2021/2/1 | Indefinite |
| MySQL Database 5.7 | 2015/10/1 | 2020/10/1 | 2023/10/1 | Indefinite |
| MySQL Database 8.0 | 2018/4/1 | 2025/4/1 | 2026/4/1 | Indefinite |
| MySQL Database 8.4 | 2024/4/1 | 2029/4/1 | 2032/4/1 | Indefinite |
MySQL Innovation ReleaseとLong Term Support(LTS)とは？
MySQL 8.1以降では、より効率的にユーザのニーズに答えられるよう、新しいリリースモデルが採用され、それまでのバージョン体系から変更されています。
MySQLの Innovation と Long-Term Support (LTS) バージョンのご紹介
MySQL 5.7以前のパッチリリースはバグ修正とセキュリティ対策が中心でしたが、8.0では新機能も含む継続的デリバリモデルに変更されました。これにより新機能を頻繁に提供できるようになりましたが、パッチバージョンのアップグレードでも入念なテストが必要になるという問題もありました。 これらの、新機能の高速なデリバリと、安定したソフトウェアの動作を両立させるためのリリースモデルがMySQL Innovation ReleaseとLong Term Support(LTS)になります。
従来のリリースモデルとの違いや、それぞれの特徴を以下で解説します。
まず、Innovation Releaseは、新機能をいち早く提供するためのリリースです。最新技術を素早く試したい場合に適しており、特徴としては短いサポート期間（次のマイナーバージョンがリリースされるまでの約3ヶ月間）と、基本的にパッチが提供されない点が挙げられます。そのため、試験的な環境や、新技術を取り入れるテストプロジェクトに向いていますが、長期的な運用には適していません。また、Innovation Releaseのサポート期間(Premier/Extended)は次のメジャーおよびマイナー・リリースまで(=約3ヶ月)となりますので、注意が必要です。
一方、Long Term Support (LTS)は安定性を重視したリリースです。LTSでは、Oracle Critical Patch Updates (CPU) カレンダーに従い四半期ごとにバグ修正やセキュリティ対策のパッチが提供され、約2年ごとに次のLTSバージョンがリリースされます。また、サポート期間も従来通り長期にわたり提供されるため、信頼性が求められる本番環境やミッションクリティカルなシステムに最適です。
1.3 MySQL Releases: Innovation and LTS
要するに、Innovation Releaseは「最新技術の試用」を目的とし、LTSは「安定した長期運用」に適したリリースです。それぞれの特性を理解し、自社のシステム運用の目的に合わせて選択することが重要です。 このリリースモデルを活用することで、MySQLはさらに幅広いユーザーのニーズに応えられるデータベースへと進化しています。
MySQLのサポート切れの対応は？
End-Of-Lifetime Support(EOL) となったバージョンのMySQLも引き続き利用することは可能です。
一方で、以下に例示したリスクを抱えることにもなります。
ソフトウェアの問題の解決が困難になる
不具合に起因した問題が発生した場合に、過去事例からの調査を行うことは可能ですが、もし新規バグの可能性が高い場合には該当のバージョンでの調査・回避が困難なケースがあります
セキュリティパッチのリリースが無い
前述した通り、EOL後にリリースされたセキュリティホールに対するパッチアップデートは提供されず、セキュアな状態を保つことができない場合があります。
アプリケーションやライブラリとの互換性
データベースとクライアントライブラリの互換性の問題によって、アプリケーション言語側のアップデートが制限される場合があります。
プラットフォームとの互換性
新しいOSやアーキテクチャに以前のバージョンが対応しておらず、移行が困難になる場合があります。
EOLとなるまでには約8年間の期間が予定されていますので、段階的なアップグレード計画を行うことで理想的な状態を保つことができるでしょう。
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